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約100年前に初めて記述された乱流境界層を完全に数学的定式化——効率的なエンジンの開発や空気抵抗の最小化へ

Photo Credit: M. GAD-EL-HAK

米カリフォルニア大学サンタバーバラ校とノルウェーのオスロ大学を中心とする数学者のチームが、乱流境界層の完全な説明を発表した。この論文は2021年10月21日付で『Physical Review Research』に掲載された。

乱流境界層とは、流体の表面、パイプの壁、地球の表面などの境界と粘性のある流体が相互作用することで発生する乱流のことだ。1920年頃、流体力学分野で著名な2人の物理学者、ハンガリーのセオドア・フォン・カルマン氏とドイツのルートヴィヒ・プラントル氏によって最初に報告された。乱流境界層は、交通機関から気象学だけでなく、あらゆる分野に出現する。例えば、地球上の大気は見かけ上の高さとは裏腹に、本質的には地球の表面を覆っていて地表上を動く空気の薄い「殻」だ。そのため、境界流としてモデル化できる。

プラントル氏は、実験の結果、境界との距離に基づいて境界層を4つの層に分けられることを突き止めた。境界の近傍には粘性底層が形成され、ここでは流れの厚さによって乱流が弱められる。次に、過渡的な遷移層(バッファー層)がある。さらにその外側に乱流層と呼ばれる領域が形成され、ここで乱流が最も完全に発達する。最後に、フォン・カルマンの公式によれば、境界層の流れが境界による影響を最も受けない後流(伴流)がある。

流体は、境界から離れるほど速く流れるが、その速度は非常に特異的に変化する。その平均速度は、粘性底層とバッファー層では増加し、乱流層で対数関数的に変化する。乱流層における速度分布を示す式であり、プラントル氏とフォン・カルマン氏が発見したこの「対数法則」は研究者たちを当惑させてきた。また、流れの変動、すなわち平均速度からの偏差も、境界層の至るところで特異な挙動を示していた。研究者たちは、この2つの変数を理解しようとし、それらを記述できる公式を導き出そうとした。

1970年代に、オーストラリアの機械エンジニアであるアルバート・アラン・タウンゼント氏は、平均流速曲線の形状が「境界面に貼り付いた渦(attached eddy)」による影響を受けていると提案した。これが正しいとすれば、対数法則の背後にある物理学と同様に、層ごとに曲線が取る奇妙な形状を説明できる。

2010年になって、米イリノイ大学の数学者たちは、境界面に貼り付いた渦について、公式を含む形式的記述を発表した。この研究では、これらの渦がどのように境界面から離れて流体の他の部分にエネルギーを伝達するかについても説明している。渦には階層があり、より小さな渦は乱流層にまで達する大きな渦にエネルギーを与えるとしており、これは対数法則を説明するのに役立つ。

しかし、流体内を移動する「境界面から離れた渦(detached eddy)」もあり、これらも乱流境界層では重要な役割を果たしている。今回の論文では、平均流速曲線の正確な形状を得るには、この境界面から離れた渦も理論に含める必要があるということを示した。

数学者らは、以上の知見を総合して、プラントル氏とフォン・カルマン氏が約100年前に記した平均速度と変動の数学的定式化を導き出した。この理論は、経験的観測を流体力学の数学的基礎であるナビエ・ストークス方程式と統合し、数式化したものだ。そして、その数式をコンピューターでのシミュレーションや実験データと比較し、正しいことを立証した。

今回完成した完全な解析モデルを用いると、さまざまなパラメーターを調整して流体の挙動を予測できるようになるので、より効率的なエンジンの開発、汚染物質の削減、乗り物の空気抵抗の最小化などさまざまな分野での応用に役立つ可能性がある。そして、最終的には、この理論を使って乱気流とジェット気流の両方を理解できるようになると考えられる。

また、境界面から離れた渦の挙動を研究して、他のタイプの乱流、特にラグランジュ乱流についての知見も得始めており、同チームは現在、その研究に焦点を当てている。

fabcross for エンジニアより転載)

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