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レアメタル供給不足の解消も——MIT、低コストでクリーンな選択的分離法を開発

硫化反応を利用した新しい選択的分離法により生成された、レアメタルの硫化物。(紫色)ネオジウム硫化物、(緑色)プラセオジム硫化物、(橙色)ジスプロシウム硫化物/Credits:Image: courtesy of the researchers

MITの研究チームが、鉱物資源やリサイクル材からコバルトやリチウム、レアアースなど貴重なレアメタルを選択的かつ経済的に分離する新プロセスを開発した。固体状態の硫化反応を活用し、金属酸化物の混合状態から特定金属の硫化物を選択的に生成して分離するものだ。従来の液液抽出分離法と異なり、大量のエネルギーや水、有機溶剤などを必要とせず、設備投資コストと温室効果ガス排出量を大幅に低減できる可能性がある。クリーンエネルギー市場拡大に伴う、レアメタルの供給不足を軽減すると期待されるもので、研究成果が、2021年12月16日の『Nature』誌に公開されている。

スマートフォンやEVなどでリチウムイオン電池の使用が拡大し、またEVの駆動モータや再生可能エネルギー発電などに使用される希土類磁石の普及も進むことで、コバルトやリチウム、レアアース元素などの稀少金属の需要が急速に拡大すると予想されている。国際エネルギー機関(IEA)の2021年報告書によれば、クリーンエネルギー技術が拡大するにつれて、単位発電容量あたりに必要な希少金属は、2010年から平均50%増加しているという。

これらレアメタルは、資源材料に少量しか含まれないため、必要量を抽出あるいはリサイクルするには、大量の鉱物資源やリサイクル材料を処理する必要がある。一般的なレアメタルの抽出分離は、資源材料を完全に溶解した後、金属イオンの錯体化やキレート化を活用して、水相と有機相の接触界面における液液分離を利用する湿式精錬法による。これは大量のエネルギーと水、酸、有機溶剤を必要とし、多量の温室効果ガスを排出するものだ。

MITの研究チームは、選択的なイオン交換により金属酸化物の混合状態から特定金属を硫化させることに成功した。反応プロセスにおける温度やガス分圧、ガス流量、炭素添加条件などを制御することによって、種々の金属の固体硫化物を選択的に生成できる。生成した多種の硫化物は、材料を粉砕して異なるサイズや密度の硫化物を物理的に分別したり、磁気感受性の違いにより磁気的に分離できることを明らかにした。56元素についてのプロセス条件を明らかにし、15元素について実験的に実証した。

研究チームは、「開発した電気化学的な製造手法は、選択性と制御性が非常に高い。また、既存の技術およびプロセス設備の多くを活用できることも大きなメリットだ。従来の湿式精錬法に比べて、設備投資コストを65~95%低減でき、温室効果ガス排出量も60~90%低減できる」と説明する。現在、1日あたり約10kgの原料を処理できる反応炉を建設するとともに、実用化の可能性について産業界と意見交換し始めている。

fabcross for エンジニアより転載)

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