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どこに置いても充電できる——新しいワイヤレス充電システムを発表

Photo: Prasad Jayathurathnage / Aalto University

フィンランドのアールト大学の研究チームは、デバイスの位置や向きに関わらず、さらに移動中でも充電できるワイヤレス電力伝送(WPT)システムを開発した。家電や物流ロボット、電気自動車(EV)に利用できる可能性がある。研究結果は、2022年1月25日付の『IEEE Transactions on Industrial Electronics』に掲載されている。

現在のWPTシステムは、デバイスを特定の場所に置いたり、トランスミッターとレシーバーの間で正確に位置を把握、通信、追跡したりといった複雑な処理を必要とする。「我々の方法の美しいところは、非常にシンプルだが極めて洗練されている点だ」と、Prasad Jayathurathnageポスドク研究員は語る。研究チームのWPTシステムでは、レシーバーの存在が電力伝送のトリガーとなるため、位置の追跡や通信が不要だという。

この技術のポイントは、トランスミッターをタイル状に並べたことだ。隣接するトランスミッターの電流の向きを互いに逆にすることで、「正」「負」の送信コイルがチェス盤のように並んだグリッドが形成される。グリッドに置かれたレシーバーは正負のトランスミッター間の磁束を捕らえ、デバイスを充電する。

「この構成で、レシーバーの位置と向きに関わらず、ほぼ一定の効率と電力を得られた」と、研究チームのメンバーは語る。レシーバーの部分だけ通電するため、複数のデバイスを同時に充電することも可能で、デバイスが移動してもスムーズに充電できるとしている。

研究チームは、フィンランドのロボットメーカーSolteq Roboticsと協力して、物流ロボットを使った実験を進めている。Jayathurathnage氏は、長年の研究を振り返って「この技術を実験室から持ち出して、倉庫で機能しているのを見るのは個人的に心躍る瞬間だった」と、喜びを語っている。

より我々に身近な例では、キッチン家電が挙げられる。通常、炊飯器やミキサーは、電源を取るためにある程度決まった場所に置く必要がある。しかし、研究チームの技術を利用すると、キッチンカウンター全体を電源に変えつつ、デバイスを置いたところだけ充電スペースとして使うことができる。

実用化には商業パッケージと認証が必要で、研究チームは今後も改良を重ねる予定だ。世界では、EV向け充電インフラの拡充のため、道路を電化しようとする動きが起こっている。研究チームは、電力レベルを現在の1kW程度から約20kWへ上げることで、こうしたEV用途にも展開したいとしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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