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紙パルプ業界の廃棄物 リグニンを低圧でプラスチックや化学製品に変換する新手法

Photo via Paula Pranda.

紙パルプ業界の廃棄物であるリグニンを、バイオベースの3Dプリント用樹脂などの高性能プラスチックや高価な化学製品に効率的に変換できることが実証された。さらに、経済面の分析とライフサイクル分析により、この手法は石油ベースの類似製品に対しても競争力を持つことが明らかになった。

研究は米デラウェア大学が主導し、加CanmetENERGYと共同で行ったもので、2022年1月19日付けで『Science Advances』に掲載された。

現在、持続可能な材料としてバイオ由来の材料は注目されているが、使用に際しては経済的でなければならない。そんな中、研究チームはリグニンに着目した。リグニンは植物の細胞壁を構成する成分の1つであり、強度と剛性を与えるものだ。紙パルプ業界ではリグニンは紙製品を作る際の副生成物で工業リグニン(Technical lignin)と呼ばれ、世界中のパルプ工場などから年間約1億トンが廃棄される。

リグニンをアップサイクルする際の主要な問題の1つは、ほとんどのプロセスが非常に高い圧力を必要とし、高価でスケールアップが難しいということだ。現在の工業技術の主な欠点としては、プロセスで使用される従来の溶剤、温度、圧力に関連する安全性の懸念、資本コスト、エネルギー消費などが挙げられている。

今回、研究チームは、リグニンの分解に使われる従来の溶媒であるメタノールを、安価なグリセリンに置き換え、通常の大気圧で行えるようにした。グリセリンを使うと、メタノールと同じ化学的官能性がかなり低い蒸気圧で与えられるため、閉じた系が不要になる。これにより、反応と分離のステップを同時に行うことができ、よりコスト効率の高いシステムとなった。気圧の面での安全性に加え、小ロットでの生産から連続稼動にスケールアップするための簡単な方法を提供し、より安価で早く、少ない労力でより多くの材料を生産することができるという。

さらに研究チームは、作製できる製品の種類についてデータセットを調査し、材料の物理的特性を推定。これにより、システムが経済的に実現可能かどうかをモデル化した。その結果、開発された低圧手法は、針葉樹クラフトリグニンからバイオベースの感圧接着剤を製造するコストを、高圧プロセスと比較して最大60%削減できることが分かった。研究で使用された他の種類の工業リグニンでは、コストの優位性はそれほど顕著ではなかったが、針葉樹クラフトリグニンは、紙パルプ産業で発生する工業リグニンの中で最も豊富な種類の1つだ。

また、新しい低圧プロセスの運転コストは、資本コストの削減と高価な副産物の生成により、すべてのケースで従来のプロセスより大幅に低くなった。材料の生産に伴う二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を把握するため、ライフサイクルアセスメントも実施した。

研究チームは現在、大気圧プロセスに関する特許出願中だ。

fabcross for エンジニアより転載)

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