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EV向けにゴムベースの固体電解質を開発——リチウムイオン電池の安全性を高める

Photo credit: Georgia Tech

米ジョージア工科大学らの研究チームは、電気自動車(EV)のバッテリー向けに、コスト効率が高く、安全な固体電解質材料を開発した。エラストマーを3D構造にすることで、イオン伝導性や機械的安定性を高めている。研究結果は、2022年1月12日付けで『Nature』に掲載されている。

液体電解質を使用する従来型のリチウムイオンバッテリーは、わずかな損傷でさえ爆発や火災につながる恐れがある。低コスト、長寿命、安全性の高いバッテリーの開発は、EVの普及にも不可欠だ。そのため、無機セラミックや有機ポリマーを使用した固体電池に注目が集まっている。

EV業界は無機固体電解質の構築に焦点を当てているが、製造が難しく、高価で、環境にも優しくない。一方、ポリマー電解質は、製造コストが安く、無毒性、柔軟性といった利点があるが、これまではイオン伝導性や機械的安定性に乏しいという欠点があった。

研究チームは、ゴムベースの有機ポリマーに着目し、優れたイオン伝導性、機械特性、電気化学的安定性を持たせることに成功した。合成ゴム、あるいはエラストマーは安価で機械特性に優れるため、民生品だけでなくウェアラブル機器やソフトロボットといった先進の技術にも利用される材料だ。研究チームは、エラストマーを3次元の可塑性結晶構造とすることで、リチウムイオンの高速移動を可能にし、結果的にバッテリーの長寿命化につなげられることを発見した。

今回報告されたエラストマー電解質を利用すると、電圧4.5Vで、電解質と電極合わせて1kgあたり410Wh以上の出力を供給できるという。また、低温条件の単純な重合プロセスで製造可能で、電極との界面も滑らかなため、短絡の原因となりうるデンドライト(樹枝状結晶)の成長を抑えられる。これにより、室温でも安定して動作する安全な固体電池を提供できる。

「イオン伝導性が高いということは、同時により多くのイオンを動かせるということだ。バッテリーの比エネルギーとエネルギー密度を上げることで、EVの走行距離が延びる可能性がある」と、論文の筆頭著者であるMichael Lee研究員は語る。

現在、研究チームはイオン伝導性をさらに高め、サイクル回数や充電時間といったバッテリー性能を改善しようと取り組んでいる。

fabcross for エンジニアより転載)

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