3DプリンターFDMによる連続ガラス繊維強化樹脂の造形技術を開発——引張強度が3倍
2022/04/12 14:40
3Dプリンターの熱溶解積層方式(FDM)は、樹脂フィラメントを高温で溶かし、積層させて造形する方式で、3Dプリント技術の中で最も広く利用されている技術である。イラン高分子石油化学研究所の研究チームが、FDMに用いるABS樹脂を連続ガラス繊維で強化し、機械的特性を高めることに成功した。
ABSやPLAなどの一般的な熱可塑性樹脂のFDMによる造形物は比較的強度が低く、用途が限定される。この問題を解決する有力な方法が強化繊維の使用だ。特に炭素繊維やガラス繊維などの連続繊維による複合樹脂は、安価に金属並みの強度を持つ3Dプリント部品ができ、自動車や航空宇宙機器部品への応用が期待できる。
研究チームは、ガラス繊維の束をあらかじめABSに含浸させた複合樹脂フィラメント(トウプリプレグ)を使用した。ABSの量を変えた4種類のトウプリプレグ(ABS重量2%、10%、20%、30%)を作製し、3Dプリントしたサンプルを引張、3点曲げ、層間せん断などの強度試験により評価した。
引張強度の値は、それぞれ89、91、91、94MPaであり、すべてのサンプルにおいて、未強化ABS樹脂での28MPaよりはるかに高い値であった。他の試験結果についても、強度の向上が確認された。特に引張弾性率で有意な改善を示したのはABS重量2%を使用した複合材料であった。
研究チームは、複合材料の弾性挙動を考慮した理論的アプローチと有限要素法による数値シミュレーションから実験結果の説明に成功した。ガラス繊維強化で最大の機械的特性を得るためには、最小限のABS重量2%が推奨されると結論した。本研究は、3Dプリントされた連続繊維強化による複合材料の機械的特性に対するABSの重量割合の影響を示した初めての研究とのことであり、強化繊維による複合樹脂への道を開くという。
本研究成果は2022年2月3日、「Rapid Prototyping Journal」誌に掲載された。
(fabcross for エンジニアより転載)