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米海軍、地上マイクロ波による1.6kWの電力伝送に成功

米国海軍研究所(NRL)は、2022年4月20日、米メリーランド州ブロッサムポイントの米軍の研究施設で、10GHzのマイクロ波ビームを使って1.6kWの電力を1km以上伝送することに成功し、地上マイクロ波による電力伝送の実現性を実証した。

「Safe and COntinuous Power bEaming – Microwave (SCOPE-M)」と呼ばれるこのプロジェクトは、国防総省研究技術担当次官室の運用エネルギー性能向上基金(OECIF:Operational Energy Capability Improvement Fund)から資金提供を受け、NRLのChristopher Rodenbeck博士の主導の下で進められてきたが、今回の実証は、過去50年近くで最も重要な実験となった。NRLは1年足らずで地上マイクロ波電力伝送の実用性を確立したのだ。

Rodenbeck博士によると、「あまりにも高い周波数は、大気の影響を受けて電力が失われる可能性があるので使用したくない」とのことだが、「10GHz帯域用の部品技術は安価で成熟しているので最適な選択肢であり、大雨が降っても電力の損失は5%未満だ」という。

今回使用されたビームの電力密度は、国際標準化団体が定めた安全基準値内であり、鳥や動物だけでなく人間にも安全だとしている。SCOPE-Mプロジェクトに参加しているPaul Jaffe博士は、過去にもっと高い出力密度でレーザーパワーを照射する実験を行った際は、何かがビームに近づくとスイッチが切れるインターロックシステムを実装したと話しており、「SCOPE-Mは電力密度が低く安全であったためその必要はなかった」と述べている。

SCOPE-Mプロジェクトの電子技術者であるBrian Tierney博士によると、米国防総省は、攻撃を受けやすい状態になる可能性がある部隊の燃料供給への依存を低減できるようになるため、宇宙からのワイヤレス電力ビーム転送の実現性に関心を寄せているという。これについて、Tierney博士は、SCOPE-Mに使用した「レクテナ(rectenna)」配列を宇宙でも使用することができるだろうとし、実現の可能性を示唆した。レクテナとは「rectifying antenna」の略で、無線電力伝送システムにおいて、電磁エネルギーを直流電流に変換する整流回路付きのアンテナのことだ。

宇宙から地球に送られる電力は1年を通して継続的な電力供給をすることが可能であり、現時点で、これは他のクリーンエネルギーにはできないことだ。電力ビーム転送は究極のグリーンテクノロジーであると語るRodenbeck博士は、「国防総省の用途で、実際に配備し使用できるシステムの実証間近のところに私たちはいると思っている」と自信をにじませている。

fabcross for エンジニアより転載)

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