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トリウム溶融塩原子炉を搭載するコンセプト実験船「THOR」

ノルウェーの造船大手Ulsteinは、トリウム溶融塩原子炉(MSR:Molten Salt Reactor)を搭載してクリーンで安全な電力を発電し、洋上で他船舶に電力供給できるコンセプト実験船「THOR」を発表した。一般的な軽水炉型原子炉と比較して、発電規模は小さいものの核燃料交換せずに長期間稼働でき、水冷機構が不要で原理的に炉心のメルトダウンを起こさないなど安全性が高いとされるMSRを活用する。将来を見据えたバッテリー駆動のゼロ・エミッション船舶に対して、電力を海上補給できる移動型充電ステーションを目指すとともに、救助や研究調査など長期航海を必要とする船舶のデザインにも展開できる。

気候変動抑制に関する要求は、将来的には船舶にも及ぶと考えられ、ゼロ・エミッション型船舶が模索されている。また、海洋開発プロジェクトにおける物資やエネルギーの補給、海洋資源などの研究調査、海難事故での救助などに使用される長期航海型船舶は、ノルウェー造船業界が得意とする分野だ。今後は、極地など遠隔で厳しい環境の海域に展開されるとともに、自然環境破壊に対する配慮が強く求められるようになっている。

Ulsteinは、次世代型バッテリー駆動のゼロ・エミッション船舶の出現を想定し、広汎な海洋分野における展開を可能にするインフラとして、長期稼働が可能で安全性が高いMSRを搭載し、洋上の移動型電力補給/充電ステーションの役割を持つとともに、研究調査や救助など多目的に対応できるコンセプト実験船「THOR」を考案した。

トリウム(232Th)は自然界に豊富に存在する低放射性金属であり、中性子吸収を経て核燃料物質ウラン233(233U)に変化し、これが核分裂反応を起こすことによって連鎖反応が生じる。Thを溶融塩中に溶解するMSRは、燃料の濃縮度が低くても増殖性が高いことから40年程度の長期燃焼が可能であり、安全性を重視した低出力運転と長期燃料無交換を両立できる特徴がある。更に、700℃の溶融塩中のTh自体が自然循環して空冷可能であり、水冷が不要であることから、冷却機能喪失などに起因するメルトダウンの危険性が小さい。MSRは20世紀半ばからアメリカを中心に研究され、現行の軽水炉を中心とした原子力発電にない特徴を有することから、レアアース産出の副産物としてTh資源が豊富なインドや中国を含めて世界規模で研究が続いている。

Ulsteinが開発したTHORは、長期稼働が可能で過酷事故リスクの小さい穏やかな発電を特徴とするMSRを搭載し、将来的なバッテリー駆動のゼロ・エミッション船舶に対して洋上での電力供給が可能な149m長のコンセプト船だ。ヘリポート、消火設備、救助艇やドローン、クレーン、研究施設なども設置できる。同時に、実証研究のため、北極海航路に適したアイスクラス級で、洋上にてTHORから電力補給可能でバッテリー駆動の、100m長で乗船定員160のゼロ・エミッション型「SIF」モデルも開発した。

fabcross for エンジニアより転載)

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