“ガラス”3Dプリンターの高速微細造形技術——数分で50µm幅の構造を持つガラス部品を造形
2022/06/29 07:00
ドイツのフライブルク大学と米カリフォルニア大学バークレー校の研究チームが、マイクロ3Dプリンターを利用し、透明なガラスからとても小さな部品を速く正確に作り出せる新しい方法を開発した。
本研究成果は2022年4月14日、「Science」誌に掲載された。
同技術は、フライブルク大の研究チームが開発した「Glassomer」と呼ぶ基材を使用する。同材料は、特殊なプラスチックの結合剤にガラス粉末を分散させた材料であり、プラスチックのようにガラスの造形を可能にする。造形した部品を炉の中で焼き、ガラスを焼結することで、100%透明な溶融石英ガラスからなる部品ができる。
本研究では、Glassomer材料をバークレー校の研究チームが開発した新しい3Dプリンターを用いて、造形することに成功した。Computed Axial Lithography(CAL)と呼ばれる新しい3Dプリンターは、層ごとに造形するのでなく、部品をワンステップで造形する。容器に入っている液体の光硬化材に、異なった角度から部品の二次元光イメージを照射。イメージが重なり、吸収される光の総量が閾値を超えると、材料は数分で固まり、部品は形作られ、余分の液体材料は洗い流せる。
従来のCALは比較的粗い構造の造形に適していたが、両研究チームの技術を組み合わせることで、初めて数分で50µm幅の構造を持つガラス部品の3D造形に成功した。さらに、その部品の表面は、従来の3D造形よりなめらかだという。
本手法は、センサーや顕微鏡の部品、特にマイクロ流体デバイスへの応用が期待される。マイクロ流体デバイスは、ラボオンチップとも呼ばれ、研究や医療診断などに必要とされている。従来のプラスチックで作製されたマイクロ流体デバイスは高温や化学物質に耐えられなかった。「ガラスの耐熱性や化学安定性のおかげで、広い応用分野、特にラボオンチップの分野で可能性が開けるでしょう」と、フライブルク大学のKotz-Helmer氏は述べた。
(fabcross for エンジニアより転載)