コンクリート3Dプリンター「c3dp」を活用した建築・施工事業が開始
2022/07/29 12:00
會澤高圧コンクリートは、アームロボット式のコンクリート3Dプリンター「c3dp」を用いて建築物や造形物を設計施工するc3dp事業を開始した。
同事業では、型枠を用いずにRの効いた形状やテクスチャーを積層造形する手法を採用している。第1弾として、北海道新冠町の太陽の森ディマシオ美術館に併設するグランピング施設の建築を受注した。
施設の建築は、もともとは5棟だった計画のうち3棟の建設を先行する形で行われた。自然との共生をテーマにした「nitay」(ニタイ:森の意)は、大地をモチーフに重厚感を意識して印刷。宇宙との共生をテーマにした「sinta」(シンタ:ゆりかごの意)には古代神話の宇宙観を示す卵形を採用した。また、アートとの共生をテーマにした「nonno」(ノンノ:花の意)は縄文から続く菱型などの植物文様をモチーフに、アールデコ調の幾何学的なテクスチャーを採用した。
宿泊棟本体は建設現場にアームロボットを持ち込み、基礎の上に直接印刷するオンサイトプリンティング方式を採用。建物の高さは2.6mで、床面積は9.8m2。各宿泊棟は5~6枚のパーツで構成され、準備や調整を含めて1日1~2枚ずつ印刷した。
建設当初は冬季施工のため冷え込みにより材料の硬化が遅くなり、積層が崩れるという問題が発生したが、仮囲いを使った温度管理などで乗り切った。2層の中空層を持つ宿泊棟の外装は型枠代わりに使用し、外側の層にはコンクリートを充填して配筋を施した鉄筋コンクリート造の構造体を作成し、内側の層には断熱材を充填した。
宿泊棟の周囲を囲う塀は高さ1.2m、直径がおよそ12m。工期短縮のため、工場で連続的に印刷した12枚のパーツをプレキャスト部材として現場に運び込み、模様がひと続きになるように組み合わせた。
同社のc3dp事業は2018年にオランダのCyBe Constructionと技術提携したことから始まり、これまで北海道白老郡のアイヌ文化施設「ウポポイ(民族共生象徴空間)」の外構ベンチの納入や公衆トイレの印刷、PC(プレストレスト・コンクリート)建築と組み合わせた立体レリーフなどの造形を手掛けている。