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急冷時の結晶組織制御を可能に——高強度ステンレス鋼を3Dプリントできる技術を開発

Credit: Q. Guo/University of Wisconsin-Madison

米国の国立標準技術研究所(NIST)とウィスコンシン大学マディソン校、アルゴンヌ国立研究所の共同研究チームが、通常方法で製造されたものと同等の特性を示す17-4 PHステンレス鋼を、3Dプリンティングにより製造する手法を開発した。3Dプリンティングの超急速加熱冷却プロセスにおける結晶構造変化を、粒子加速器から発生する高エネルギーX線を用いてダイナミックにその場観察し、従来製造法では必要な熱処理を施すことなく、3Dプリンティングしたままの状態で優れた特性が得られる結晶組織制御指針を確立したものだ。研究成果が、『Additive Manufacturing』誌の2022年11月号に公開されている。

強度と耐久性は、航空機や貨物船、原子力発電所などの技術分野において重要な基本特性であり、多くの分野で極めて高強度で耐食性に優れた17-4析出硬化型(PH)ステンレス鋼が用いられている。17-4 PHステンレス鋼は、主要合金元素として17%Cr、4%Ni、4%Cu、0.3%Nbを含み、固溶化熱処理によって100%(フル)マルテンサイト組織を得た後、時効硬化熱処理を行うことで微細な金属間化合物を析出させて強度を高めている。

17-4 PHステンレス鋼の用途としては、シャフトやタービン部品、ポンプ部品などがあり、その多くが複雑な形状を有しているため、鋳造や鍛造、切削加工といった手法で製造されている。近年技術的進歩の著しい3Dプリンティングの活用が検討されているが、粉末金属の溶融を介した3Dプリンティングでは、冷却速度が毎秒数百万℃以上の非平衡プロセスが含まれる上、17-4 PHステンレス鋼ではフルマルテンサイト組織中に金属間化合物を微細析出させる必要があり、極めて高度なダイナミック相変態制御が求められる。

研究チームは、超高速で温度変化する過程で生じる結晶ミクロ構造変化を、ダイナミックにその場観察することによって、3Dプリンティングしたままで17-4 PHステンレス鋼として望ましい結晶ミクロ組織を得る手法にチャレンジした。観察手段として、アルゴンヌ国立研究所の先端放射光施設APSから放出される高エネルギーX線を用いたシンクロトロン高分解能X線回折装置「XRD」を活用した。

その結果、3Dプリンティング過程のミリ秒間に起こる超高速な結晶構造変化をマッピングし、原料粉末の化学組成などの金属学的因子が、どのように結晶ミクロ組織および析出挙動に影響を与えるかを明らかにすることに成功した。102~107℃/sの広い冷却速度範囲でフルマルテンサイト組織を得るとともに、微細な金属間化合物を析出させることが可能であることを確認した。

コストと生産性に影響のある固溶化と時効硬化の熱処理が必要な従来製造方法に比べて、付加的熱処理なしで3Dプリンティング過程における熱履歴ままで、通常の17-4 PHステンレス鋼と同等以上の降伏強度1157±23MPaを達成することを確認した。XRDで得られた指針をベースとした3Dプリンティング技術は、17-4 PHステンレス鋼を超えて展開できるとともに実用化へのハードルを下げる、と研究チームは期待している。

fabcross for エンジニアより転載)

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