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製造コストを最大40%削減する半固体リチウムイオン電池のプラットフォーム

Credits:Courtesy of 24M Technology, edited by MIT News

マサチューセッツ工科大学(MIT)発の企業である24M Technologiesが、電池製造に要する材料と工程を少なくする、半固体リチウムイオン電池を設計した。電池のイノベーションというと、新しい化学反応や材料が大いに注目される。対して、コスト削減のための製造過程の重要性は見落とされがちだ。同電池は、製造コストを最大40%削減するという。

電池は主に、プラスとマイナスに帯電した電極と電極間をイオンが流れるようにするための電解液材料から構成される。従来のリチウムイオン電池には、不活性なプラスチックや金属の層により電解液から隔てられた固体電極が用いられていた。

同社が開発した設計では、従来の電池における不活性な材料を取り除き、柔らかくて粘つく電極混合物を採用している。同電池はMITの研究室で開発されていた半固体フロー電池の研究から生まれた。フロー電池の試作機開発と共に、同社が設立された。同社は、商品化の際にコスト分析の結果、フロー電池の電極で作る、柔らかくて粘つく懸濁液を電解液に直接混ぜた同電池の開発に至った。

同電池は、従来のリチウムイオン電池製造に必要な、電極を乾燥させ固めるという大量のエネルギーを消費する作業を必要とせず、製造コストを最大40%削減可能だ。また、銅やアルミニウムといった高価な材料を含む、従来の電池における不活性な材料を80%以上削減できる。さらに、バインダーは必要なく、電極は厚いため、電池のエネルギー密度が向上する。同設計は、リチウムイオンの化学反応のさまざまな組み合わせに対応できるという。つまり、製造工程を大幅に変更することなく、より性能の良い材料を製造ラインに組み込めるのだ。

同社はすでに、富士フイルムやVolkswagen、Lucas TVS、Axxiva、Freyrなどの多国籍企業に同技術をライセンス供与している。Lucas TVSとAxxiva、Freyrは、同技術をベースにしたギガワット規模の年間生産能力を持つ工場をインドや中国、ノルウェー、アメリカに建設する予定だ。

同社のCEO太田直樹氏は、「同技術による半固体リチウムイオン電池のプラットフォームは、住宅用蓄電システム向けの数百メガワット規模での生産能力を実証済みです。今後、ギガワット規模での生産能力を証明していきたい」と説明した。パートナー企業の多くは急速に成長する電気自動車(EV)市場に目を向けており、同社はこの新しい同技術がEVの普及を加速させると考えている。

fabcross for エンジニアより転載)

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