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動く3Dホログラムも可能に——MIT、高速かつ高精度に光を制御できるデバイスを開発

Credits:Credit: Sampson Wilcox

SF映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』で、R2D2が映し出す、助けを求めるレイア姫の立体ホログラム画像は、当時は映画ならではのマジックと言われていた。あれから45年以上が経ったが、リアルでダイナミックに動くホログラム画像を作り出す技術は、未だに実現されていない。液晶やマイクロミラーを用いた既存のメカニカルなホログラム技術では不可能な、極めて精密かつ高速な光の制御が必要になるためだ。

MITを中心とする国際研究チームは、光ビームを特定の方向に集光したり、光の強度を操作したりできるプログラマブルデバイスを実証し、既存のメカニカルなデバイスよりも数百万倍高速動作させることに成功した。自動運転向けLiDARセンサーの開発や、光を使う脳スキャナーの性能を高めることができるという。また、大量生産したときに、デバイスの品質をほぼ完璧に保つことができる製造プロセスも開発した。

このような、光の発光特性を制御して光を操るデバイスは、「空間光変調器(SLM)」と呼ばれている。光源からの光束を通過する際に変形させ、一方向に集光したり、多数の場所に屈折させて結像させたりすることができる。SLMの内部では、2次元に配列された光変調器が光を制御している。しかし、光の波長は数百nmしかないため、光を高速で精密に制御するためには、ナノスケールの制御素子を極めて高密度に配列する必要がある。

研究チームは、これを実現するため、SLMの制御に「マイクロLEDディスプレイ」を使用した。LEDの画素がシリコンチップ上に形成されたフォトニック結晶のそれぞれに対応するよう配置されており、フォトニック結晶に導入されたマイクロキャビティ(点状欠陥)を制御する。光が点状欠陥に入ると、再び外部に出るまで10万回以上内部で反射を繰り返す。この欠陥の反射率を変化させることで、光が外部に出るまでの時間を制御することができる。配置されたアレイを同時に制御し光を変調することで、全体として光のビームを正確かつ高速に制御することが可能だ。デバイスの制御にLEDを使用することで、このアレイがプログラマブルで再構成可能であるだけでなく、配線不要な完全にワイヤレスなデバイスにすることができた。

今回の研究でこのデバイスは、既存のSLMの10倍の「時空間帯域幅」を持つ光場を、空間的にも時間的にもほぼ完璧に制御することを実証した。巨大な光の帯域を精密に制御できれば、高性能な通信システムなど、大量の情報を高速に伝達できるデバイスが実現できると研究チームは考えている。

fabcross for エンジニアより転載)

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