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3Dプリンターでパターンを造形——ARナビゲーション可能なスマートコンタクトレンズを開発

CREDIT: KOREA ELECTROTECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE

韓国電気研究院(KERI)と蔚山科学技術院(UNIST)の研究チームは、3Dプリンターを用いて、ARナビゲーション機能を搭載したスマートコンタクトレンズを実現するためのコア技術を開発した。この技術を活用すれば、通常のコンタクトレンズのように装着するだけで、さまざまな情報を受け取ることができる。

AR搭載のスマートコンタクトレンズの実現には、低電力で駆動できるエレクトロクロミック物質によるディスプレイが適している。エレクトロクロミズムとは電気化学反応により物質の色が可逆的に反応する現象で、スマートコンタクトレンズの材料としては、青色顔料などに用いられるプルシアンブルーが注目されている。しかし、従来は電気メッキ法により基板上に膜状にプルシアンブルーを塗布していたため、文字や画像などさまざまな情報を表現できるディスプレイの作製は難しかった。

今回開発した技術では、3Dプリンターを用いて電圧をかけずに、レンズに微細パターンを印刷する。鍵となるのは、メニスカスという現象だ。メニスカスとは、水滴を一定の圧力で軽く押したり引いたりすることで、毛細管現象により水滴に曲面が形成される現象を指す。

インクを充填したマイクロノズルと基板を接触させると、基板上に酸性フェリシアン系インクのメニスカスが形成する。メニスカス内では前駆体イオンが自然に反応し、常温でFeFe(CN)6が結晶化する。メニスカスの溶媒が蒸発すると、水分子と前駆体イオンは対流によりメニスカス表面に向かって移動し蓄積する。この現象は、FeFe(CN)6の結晶化を促進させ、印刷過程で結晶化に影響を与える因子を制御して、基板上に均一なプルシアンブルーパターンを印刷するために重要な要素となる。

マイクロノズルを正確に動かすことでプルシアンブルーは連続的に結晶化し、平面だけでなく曲面の微細なパターンを形成できる。研究チームはこの技術を用いて、AR搭載スマートコンタクトレンズのディスプレイとして十分微細な7.2μmのマイクロパターン形成に成功した。色は連続的かつ均一であることが確かめられている。

この手法は自然蒸発を利用しており架電が不要なため、導体以外の基板を使用できることも特徴だ。

スマートコンタクトレンズによるナビゲーションシステムへの応用が期待でき、KERIのSeol Seung-Kwon博士は、「ARデバイスの小型化、機能化に大きく貢献するだろう」と語っている。

fabcross for エンジニアより転載)

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