記録的な高エネルギー効率でデータを受信できる、万能なデコーダチップを開発
2023/04/07 07:30
インターネットを介して送受信されるデータは、ノイズによって破損する場合があるため、送信者はデータをコード化し、受信者は復号アルゴリズムを使って誤り訂正をしてデータを復元(デコード)している。一般的に、デコード処理をするハードウェア(デコーダ)は、ある特定の種類のコードしか処理できず、デバイスは異なるコードをデコードするために多くのチップを必要とする。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)とボストン大学、アイルランドのメイヌース大学の研究チームが、新しい統計モデルを用いて、デコード処理を従来技術よりシンプルかつ高速にするデコーダチップ「ORBGRAND(Ordered Reliability Bits GRAND)」を開発した。
同チップは、研究チームが以前開発した、あらゆるコード構成ビット中の誤り訂正符号を解読できる、万能な復号アルゴリズム「GRAND(Guessing Random Additive Noise Decoding)」をベースにしている。送信されるデータの多くは、誤り部分を見つけ出すための信頼性情報と共に受信される。同チップは、信頼性情報を利用し、単一/複数のビットが誤りである確率に基づいてデータを並び替える統計モデルを使用することで、効率的なデコード処理を可能にしている。
同チップの開発により、複数のコードに対応する個別のハードウェアが不要になるため、デバイスに必要なチップの数が抑えられ、コスト削減と持続可能性の向上が期待できる。また、デコード処理に必要なエネルギー消費の低減は、デバイス性能を向上させ、バッテリー寿命を延すことにつながる。特に、VRや5Gネットワークのような要求の厳しいアプリケーションに役立つという。
研究チームは、同チップを用いてデコード処理をしたところ、1ビット当たりわずか0.76ピコジュールのエネルギー消費で、他のチップと比べても最高精度での復号化に成功した。MITのMuriel Médard教授は、「新チップ開発における最大の課題のひとつは、エネルギー消費の低減にあり、ORBGRANDは、1ビット当たり1ピコジュールという壁を破った初めてのチップです」と説明した。
同研究成果は、2023年2月19日~23日にサンフランシスコで開催された国際固体回路会議(ISSCC 2023)で発表された。
(fabcross for エンジニアより転載)