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リチウムイオンよりも安全でクリーン——ウィーン工科大学、セラミックスベースの酸素イオン電池を開発

CREDIT: TU WIEN

ウィーン工科大学の研究チームは、セラミックスを利用した酸素イオン電池の開発に成功した。酸素イオン電池は、リチウムイオン電池ほど高いエネルギー密度は得られないが、蓄電量が時間とともに減少することがないため、長寿命が期待できる。また、素材に希少元素を使用せず、セラミックスという不燃性材料を使うため、反応性の高いリチウムよりも安全だと言える。

研究チームが開発した酸素イオン電池のセラミックスは、二価の酸素イオンを吸収/放出することができる。電圧をかけると、酸素イオンがセラミックス材料間を移動することで電流が生じる。研究チームによると、基本的な原理はリチウムイオン電池とよく似ているが、セラミックスは不燃材料であり、リチウムイオン電池で問題となる発火事故に至るリスクは低く、素材として高価で環境に有害な生産プロセスを必要とする希少元素も不要だ。

この新しい電池技術の最も重要な利点は、他の電池に比べて長寿命だということだ。一般的な二次電池は、何度も充電を繰り返すことで電荷担体が劣化して性能が低下するという問題がある。これに対して、酸素イオン電池は副反応で酸素が失われたとしても、周囲の空気中の酸素で補うことができるため、再生が容易だ。

ただし、酸素イオン電池は、リチウムイオン電池の3分の1程度のエネルギー密度しか実現できず、動作中は200~400℃の温度になるため、スマートフォンや電気自動車には向かない。そのため大型の充電設備、例えば、太陽光エネルギーや風力エネルギーを一時的に貯蔵するための大型のエネルギー貯蔵装置が必要な場合、安全で長寿命という特徴を備えた酸素イオン電池は優れたソリューションになり得る。

「建物全体に大量のエネルギー貯蔵モジュールを組み込むような場合、単体のエネルギー密度の低さや動作温度の高さは大きな問題にはなりません。むしろ長い耐用年数、希少元素なしでこれらの材料を大量に生産できること、火災の危険がないという点で、私達の電池は強みを発揮するでしょう」と、研究チームのAlexander Schmid氏は述べている。

fabcross for エンジニアより転載)

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