MIT、センサーを組み込んだデバイスを3Dプリントする技術「MechSense」を発表
2023/05/03 07:00
近年の3Dプリント技術は、回転機構を持ったデバイスを製造できるようになった。しかし、回転機構を持ったデバイスを3Dプリントする過程で同時にセンサーも組み込むことは、現時点では難易度が高い。理由は、回転する部品の構造の複雑さにあり、多くの場合、センサーの取り付けは完成後の手作業になる。
手作業によるセンサーの実装も、実は簡単ではない。デバイスに内蔵することで、可動部分に配線が絡まったり、回転を妨げたりする恐れがある。一方で、センサーを外付けすればデバイスの外寸が大きくなり、動作が制限される場合も想定できる。
これらの課題に対して、マサチューセッツ工科大学(MIT)のエンジニアは、回転機構を持つデバイスを3Dプリントで製作する過程で、同時にセンサーを組み込む技術を考案した。
今回MITが発表した技術「MechSense」は、複合材料を扱う3Dプリンターに導電性のプリントフィラメントを使用して、可動部にセンサーを印刷する。これにより、デバイスの角度位置、回転速度、回転方向を感知できるようになる。
MechSenseによるセンサーは、可動部品の動きを妨げない機構として、静電容量方式を採用している。センサーの作成手順は、まず本体となる「固定プレート」に、導電性材料で3つの「パッチ(扇型の区画)」を円形に並べて印刷する。各パッチは、非導電性の材料で互いに隔てられている。次に、これら3つのパッチと同一形状・同一素材の「第4のパッチ」を、固定プレートの上で回転する「円形プレート」に印刷する。この機構を「フローティングコンデンサー」と呼ぶ。
デバイスとセンサーの動作は次のようになる。円形プレートが回転する際、ここに印刷された第4のパッチが、固定プレート上の3つのパッチの上を順番に通過する。円形プレート側と固定プレート側のパッチが重なった面積が変化することによって、各パッチの静電容量が変化する。この静電容量の変化から、円形プレートの回転数を検出する。
フローティングコンデンサーは回路に接続されていない構造のため、配線などが絡むことはない。固定プレートの静電容量の変化はソフトウェア処理され、角度位置、回転方向、回転速度などの数値に変換される。
研究者らは、部品にセンサーを組み込む設計プロセスを支援するために、3次元CAD「SolidWorks」の拡張機能を用意した。設計者が機構の回転部、固定部、回転軸を指定すると、3Dプリントモデルにセンサーとなるパッチを追加する。これにより、プロトタイプ作製が迅速化したという。
(fabcross for エンジニアより転載)