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すい臓がんを集中的に治療する、米粒より小さな埋め込み型デバイスを開発

Credit: Houston Methodist

ヒューストン・メソジスト研究所の研究チームが、すい臓がんの治療を可能とする、米粒より小さな埋め込み型デバイスの開発に成功した。同デバイスは、「ナノ流体薬剤溶出シード(the nanofluidic drug-eluting seed: NDES)」と呼ばれ、薬剤を低用量持続投与する免疫療法を提供する。

同研究成果は2023年1月19日、「Advanced Science」誌に掲載された。

すい臓がんは、最も治療が困難ながんの1つといわれている。進行した段階で診断されることがほとんどで、実際85%の患者は、転移性疾患を発症しているため、治療がより困難になってしまうのだ。

免疫療法は、これまで良い治療法がなかったがんに対する有望な治療法である。しかし、現在の免疫療法は全身に投与されるため、多くの副作用の発生が問題となっている。腫瘍部分に直接薬剤を集中して投与できれば、身体は有毒な薬剤にさらされず、副作用も少なくなる。効果的な局所投与には、腫瘍内への正確な注入が必要であり、薬剤を長時間、局所的に閉じ込めることが重要である。

同研究で開発したNDESは、低侵襲な方法で腫瘍内に埋め込むことができ、腫瘍部分にとどまり、拡散によって薬物分子を数週間の時間枠でゆっくりと制御しながら放出可能だ。マウスモデルでNDESの免疫療法の効果を調べたところ、従来の全身性免疫療法と比較して、4分の1の薬剤容量で腫瘍縮小が達成できた。

NDESによる治療では、強力な抗がん剤の被ばくから身体を守ることができ、副作用の軽減にもつながるため、患者の健康増進が期待できる。ヒューストン・メソジスト研究所のAlessandro Grattoni教授は、「私たちの目標は、がんの治療方法を変えることです。本装置は低侵襲で効果的な方法ですい臓腫瘍に浸透し、より少ない薬剤で集中的な治療を可能にする技術だと考えています」と説明した。

今後、研究チームは、同技術の有効性を評価するために、追加のラボ試験を実施する予定だ。5年以内にNDESによる治療法を、すい臓がんから世界中の人々を守るものにしたいとしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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