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電子レンジを利用して月面で金属を得る———NASAの「BIG Idea Challenge」で選ばれた大学生チームが金属製錬システムを開発中

Credit: Kate Myers/Penn State. All Rights Reserved.

ペンシルベニア州立大学の学生たちがアメリカ航空宇宙局(NASA)の「Breakthrough, Innovative and Game-Changing(BIG) Idea Challenge」プログラムで、家庭用電子レンジを応用した月面での金属製錬システムの開発に取り組んでいる。

NASAの「BIG Idea Challenge」は、アメリカの大学生/大学院生を対象として2016年にスタートしたもので、毎年異なるテーマでNASAをサポートする新しいシステムのアイデアを募集している。選ばれた学生チームはNASAから資金提供を受け、提案したシステムの構築および実証に取り組むことになる。

2023年の「BIG Idea Challenge」では、NASAの有人月面着陸プログラム「アルテミス計画」のサポートに向け、月面で金属を精錬して製品を作るというテーマが設定された。月面で長期間居住できる構造物を作るには、月で調達できる原材料を使って建設資材を作り、加工する必要があるためだ。

このテーマに対し、電子レンジを使ったシステムのアイデアで13万ドル(約1840万円)の資金援助を獲得したのが、ペンシルベニア州立大学「学生宇宙プログラム研究室」の大学生チームだ。月面の堆積物に含まれる鉱物「イルメナイト」を製錬できる、持ち運び可能なシステムの開発に取り組んでいる。

電子レンジなどのマイクロ波を利用して金属を製錬することは新しいアイデアではない。だが月へと輸送するため、重量やサイズを最小限に抑えながら、エネルギー効率を最大化する必要があるほか、地球との物理条件の違いを考慮しなくてはならないことが大きな課題となる。チームは現在、家庭用電子レンジをベースに、マイクロ波のエネルギーを試験材料に集中させるため、庫内の表面形状および素材に変更を加える作業に取り組んでいる。最終的には、月面で工業規模での利用が可能なのか検証していくという。

同大学のSven Bilén教授は、「NASAのエンジニアと直接協力してプロジェクトを実施することで、学生たちはアルテミス計画におけるNASAのミッションや優先事項に触れることができます。彼らは授業以外の場で、大学院レベルの概念である設計や構築の技術を学ぶことに挑戦しているのです」とコメントしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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