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車や建物自体へのエネルギー貯蔵へ——東北大学とジョンズ・ホプキンス大学が蓄電を可能にする3D構造のカーボン材料を開発

階層的多孔質カーボンマイクロラティスの外観と電子顕微鏡写真。(a)造形後・炭素化後・MgOナノ粒子脱離後の各段階での試料の外観。(b)走査電子顕微鏡と透過電子顕微鏡による4段階の多孔質構造の写真。

東北大学は2023年8月23日、同大学と米ジョンズ・ホプキンス大学の国際共同研究チームが、車や建物など自体にエネルギーを貯蔵できる3D構造のカーボン材料を開発したと発表した。

今回発表されたのは、機械的強度に優れる格子構造とキャパシター性能を付与する比表面積を併せ持つ炭素マイクロ構造「階層的多孔質カーボンマイクロラティス」だ。

カーボンマイクロラティスとは3Dプリンターで作製したジャングルジムなどの周期的格子構造(ラティス)を、不燃雰囲気/高音下で熱処理することで得られる、ほぼ純炭素製の材料だ。

東北大学ではエネルギー貯蔵デバイス技術について研究を進めており、構造としての強度と蓄電能力のための非表面積を併せ持つ階層的多孔質カーボン材料を、光造形3Dプリンターを用いて作製した。

同研究では、まず光造形3Dプリンターで造形する光硬化性樹脂に酸化マグネシウム(MgO)ナノ粒子を混合し、複合材料樹脂を調整してマイクロラティス構造を造形、構造を保ったまま炭素化。得られたカーボンマイクロラティスを60℃の塩酸に1日半浸漬することでMgOナノ粒子を脱離し、コンピューターデザインによる格子構造の孔(~100µm)を維持したまま柱の内部にナノ多孔質を導入した。

窒素ガス吸着表面積測定/走査電子顕微鏡と透過電子顕微鏡を用いた観察から、柱の内部にはMgOナノ粒子の脱離に由来するメソ孔(~50nm)に加えて、マクロ孔(~2µm)とミクロ孔(~1nm)が確認された。この結果より、格子構造/マクロ孔/メソ孔/ナノ孔の4段階の孔径を有する階層的多孔質カーボンマイクロラティスが作製された。

これらの孔のネットワークは、炭素化に伴う線形収縮率を従来の60~70%から40%まで減少させるだけでなく、植物の維管束のように梁の内部に広がり、構造全体に液体電解質を輸送する流路として機能する。

ラティス構造は微細なほど充放電性能が向上し、過去のナトリウムイオン電池負極に関する研究と同様の結果が得られた。水系電解質/高電圧に耐える有機系電解質の両方で、最大105F・g-1/13.8F・g-1の比容量を示し、電極面積当たりに換算してそれぞれ11.5F・cm-2/1.5F・cm-2に達した。

また現行の電気化学キャパシターは、ナノ多孔質カーボン中の電解質輸送が遅く薄膜形状に限られるが、今回の成果は厚さ=高さとなるような立体的な構造でも蓄電機能が発現できることを実証した。キャパシターとして機能する比表面積(150〜300m2 g-1)を有しながら、圧縮強度7.45~10.45MPaと剛性率400〜700MPaを示し、変形の少ない構造材料としても十分な性質を示した。

同材料の応用により、車や建物自体へのエネルギーの貯蔵など、より形状の自由度が高い構造的エネルギー貯蔵技術の開発が期待される。この研究成果は、2023年8月2日にナノテクノロジー/科学の専門誌『Small』にオンライン掲載された。

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