電気を蓄える構造部材も——高い構造強度を備えたスーパーキャパシタを開発
2023/11/03 06:30
カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが、カーボンファイバーや導電性高分子などの斬新な組み合わせにより、構造強度とエネルギー貯蔵能力の両方を併せ持つ構造スーパーキャパシタを開発した。導電性高分子と還元型酸化グラフェンの混合物でコーティングされたカーボンファイバー繊維を電極に用い、エポキシ樹脂とポリエチレンオキシドの混合物を固体電解質に活用することで、機械的負荷を支えると同時にスーパーキャパシタとして電力を貯蔵できる。補強のための重量増なしに、電子機器や自動車用に電力を供給できる新たな構造材料として広く応用できると期待している。研究成果が、『Science Advances』誌の2023年9月号に論文公開されている。
スーパーキャパシタは、数10mF以上の非常に大きな静電容量を持つコンデンサであり、電解質の電極周辺に形成される逆極性電気二重層を誘電体の代わりに利用して蓄電量を高めている。バッテリーよりも高い出力密度(W/kg)とコンデンサよりも大きなエネルギー密度(Wh/kg)を持つことから注目を集めている。だが、通常のスーパーキャパシタは電力貯蔵に関しては優れているものの、構造要素として必要な機械的強度が不足しているのが現状だ。そのため機械的負荷を支えつつ、電気エネルギー貯蔵機能も備えた単一デバイスを開発することは長い間の課題であった。
今回研究チームは、このようなデバイスの開発にチャレンジした。電極は、繊維に織り込まれて構造強度を高めるカーボンファイバーから成り、導電性高分子と還元型酸化グラフェンから構成される特別な混合物でコーティングされ、イオン移動とエネルギー貯蔵能力を促進している。固体電解質は、エポキシ樹脂と導電性高分子であるポリエチレンオキシドの混合物であり、エポキシ樹脂は構造支持機能を発揮する一方、ポリエチレンオキシドは電解質全体にわたって細孔のネットワークを生じ、イオン移動を促進している。この際、電極近傍の電解質領域ではポリエチレンオキシドを高濃度として、電極電解質界面におけるイオン移動度を高め、電気化学的性能を促進する。他方、電解質の中央部分は、ポリエチレンオキシド濃度を低くすることにより細孔数を少なくし、充分なイオン移動度を維持しつつも構造支持機能を確保できるように工夫した。
研究チームは実証実験として、開発した構造スーパーキャパシタを用いて船体を作り、太陽電池を搭載したミニチュアボートを作成して、水面上で航行できることを確認した。これは構造用エネルギー貯蔵システムに向けて大きな進歩と言えるが、研究チームは未だやるべきことは多いと説明する。「今後このスーパーキャパシタのエネルギー密度を増大することに注力し、バッテリーと同等程度にする」と、研究チームは語る。
(fabcross for エンジニアより転載)