海に蓄積された太陽熱エネルギーを電力に変換する、海洋温度差発電プラットフォームの最新コンセプトを発表
2023/12/15 06:30
Global OTECは、2023年11月3日、オーストリアで開催された「International Vienna Energy and Climate Forum(IVECF)」で、同社が開発した次世代海洋温度差発電(OTEC:Ocean Thermal Energy Conversion)プラットフォーム「Dominique」の最新コンセプトについて公式プレゼンテーションを行った。
OTECとは、表層海水と深層海水の温度差を利用してクリーンで持続可能なエネルギーを生み出す再生可能エネルギー技術だ。太陽光で温められた暖かい表層海水を利用して沸点の低い液体を蒸発させて、タービンを回転させる蒸気を液体から発生させる。その後、深海からくみ上げた冷水で蒸気を冷却し液体に戻すことでサイクルを継続できる。こうして、海に蓄積された太陽熱エネルギーを電力に変換できる。
熱帯地方では、海面の温度は25℃から28℃で保たれている。一方、水面下の水深800m付近では、極地から流れ込む海流によって水温は4℃と冷たい。OTECが最も効果的に機能するのは、年間を通じて表層海水と深層海水の温度差が最低20℃はある、赤道領域の熱帯地方だ。
この広大で未開拓のエネルギー源を利用することで、小島嶼開発途上国(SIDS)や沿岸諸国が化石燃料への依存を大幅に減らし、より環境に優しく持続可能な未来への道を開く可能性があるという。
IVECFで発表されたDominiqueは、OTECモジュールアレイを使用して海水を利用し、正味出力1.5MWを生み出せるというもので、サントメ・プリンシペ民主共和国に設置される予定となっている。船舶の船体/機関等について検査し、公式に証明する船級協会の英Lloyd’s Register(LR)から、2023年6月に基本設計承認(AiP)を取得しているが、IVECFではAiP取得後に構造を改良した最新のレイアウトについて発表された。
Dominiqueの実現に向けた次のステップは、地盤(海底)調査とプロジェクト固有のシステムの最終詳細設計だ。これによりシステムの建設が可能となり、その後、設置されることになる。同社は、2025年末までにDominiqueの試運転を開始することを目指している。
Dominiqueは、国連公認の国際組織SIDS DOCKに参加している32の小島および低平地開発途上国全体で、今後10年間に交換する必要があるディーゼル発電設備の発電容量のうち10GWを脱炭素化できる可能性がある。Dominiqueは、サントメ・プリンシペのクリーンエネルギー転換だけでなく、世界中の小島嶼国にとっても重要な役割を果たすだろうと、同社は述べている。
サントメ・プリンシペには初の商業規模となるOTECプラットフォームが設置される予定で、Global OTECの創業者兼CEOのDan Grech氏は「私たちは、Dominiqueが小さな島々や沿岸諸国にとって生活を一変させるものであると確信しており、だからこそ、このプロジェクトのペースは成功に向かっていると見ている」と強調した。
(fabcross for エンジニアより転載)