活性炭よりサステナブル——MIT、ハイドロゲルを使って微小汚染物質を除去する水処理技術を考案
2024/02/07 06:30
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、双性イオン性を示すハイドロゲルを用いて水中の微量汚染物質を除去するシングルステップの水処理技術を開発した。操作の複雑さを最小限に抑えながら、有機および無機の汚染物質を持続可能に捕捉する技術だ。研究成果は『Nature Water』誌に2024年1月4日付で公開されている。
微量汚染物質は化学的に多様で、従来の汚染物質と比較して低濃度であるにもかかわらず、人の健康や環境に有害な影響を与える可能性がある。水中から微量汚染物質を除去するために活性炭が利用されるが、活性炭フィルターの製造には大量のエネルギーが必要であり、温室効果ガスの排出を伴うという問題もある。MITの研究チームは、2019年に水中の微量汚染物質を捕捉する技術の研究を開始した。それまで研究してきたハイドロゲルを用いた薬剤分子の製剤化技術が、水処理のような環境問題に応用できることがわかったためだ。このハイドロゲルを用いたシステムは、活性炭と異なり環境に優しい材料を原料としており、室温で製造できるため活性炭より持続可能なシステムだと言える。
商業的な水処理工程において、除去にかかる時間が短いことは重要だ。しかし、これまでのように個々の物質に焦点を当てて多種多様な微量汚染物質を除去しようとすると、非常に多くのユニットオペレーションを持つシステムになってしまう。
そこで、研究チームは高い多孔性を与える双性イオン分子を利用して、微量汚染物質を素早く取り込むシステムを設計した。双性イオンとは、1分子内に正電荷と負電荷を同数持つ分子のことだ。開発したシステムは、双性イオン分子をハイドロゲル内の骨格を形成する材料として使用している。他のハイドロゲルの足場材料と比べて、双性イオン分子は水を引きつける力が大きい。さらに、双性イオンの正電荷と負電荷により、従来のハイドロゲルよりも低い圧縮性を持つため、ハイドロゲルの防潤性、堅牢性、多孔性が著しく向上し、水処理用ハイドロゲルシステムのスケールアップに役立つ。
多くの無機微量汚染物質や一部の有機微量汚染物質は帯電しているため、双性イオン分子に結合する。また、有機微量汚染物質は、ハイドロゲル内のミセルや界面活性剤に結合する。開発した双性イオン性ハイドロゲル水処理システムは、化学的に多様な6種類の微小汚染物質を市販の活性炭より10倍速く除去することができた。また、このシステムはミセルや界面活性剤、双性イオン分子、その他のキレート剤を変更できるので、異なる機能を持つシステムの構築が可能だ。さらに、シングルステップで複数の低濃度汚染物質を除去し、除去に使用する粒子は再生利用できるという特徴がある。
現在、研究チームはこのシステムについて、大規模な工業用から持ち運び可能な家庭用まで製品化を進めている。
(fabcross for エンジニアより転載)