同研究成果は2023年10月28日、「Polymers for Advanced Technologies」誌に掲載されている。

気候変動により気温が上昇する中、涼しく過ごすための技術は非常に重要になっている。その技術のひとつが、人体をより効率的に冷却するための衣服の改良だ。研究チームは、優れた熱伝導特性を持つナノダイヤモンドに着目した。

ナノダイヤモンドは、宝石とは異なり、小さく安価で、簡単に製造できるもので、廃棄物からも製造可能だという。

研究チームは、電界紡糸法を使ってナノダイヤモンドを含んだポリウレタンからなるナノファイバーを布地の肌側に塗布し、片面コーティング布地を作製した。電界紡糸法とは、高電圧をかけてポリマー溶液を細管から噴射することによって、ナノサイズの糸であるナノファイバーを紡糸する技術だ。

非対称構造の同布地は、大気への熱放散を促進する一方、人体への熱の移動を抑制し、着衣時の快適さを向上させる。さらに、家庭やオフィスの冷房の設定温度を2～3℃高くできるため、20～30％の省エネが見込まれるという。

研究チームは、スポーツウェアから消防士の個人防護服まで、同技術のさまざまな応用を想定している。同研究では、ナノダイヤモンドが綿のUVカット効果を高め、夏のアウトドアウェアに最適であることも明らかにした。

ロイヤルメルボルン工科大学のShadi Houshyar博士は「本研究で使用した電界紡糸法は簡単で、従来の方法と比較して製造工程を大幅に簡略化できます」と説明した。

研究チームは今後、洗濯時のナノファイバーの耐久性についても研究し、快適なだけでなく環境にも優しい衣服を目指している。

（fabcross for エンジニアより転載）