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人工衛星を軽量化——2D新素材を活用した3Dプリント製通信デバイスを開発

カナダのブリティッシュコロンビア大学オカナガン校(UBCO)の研究チームは2024年2月29日、アメリカのドレクセル大学と共同で、3Dプリントで積層造形されたポリマー構造表面に2D材料「MXene(マキシン)」をコーティングすることにより、従来よりも約10倍軽量かつ安価で容易に製造できる衛星通信用デバイスを製作することに成功したと発表した。従来の金属製と同等の電磁特性を有し、アンテナや導波管、フィルターなどに使うことができ、打ち上げロケットのペイロード削減に貢献できると期待される。研究成果が、2024年1月19日に『Materials Today』誌にオンライン公開されている。

世界的に人工衛星ビジネスが拡大する中で、打ち上げロケットのペイロードの削減は、重要な技術課題となっている。人工衛星に搭載される通信機器には、マイクロ波帯域に対応したアンテナや導波管、フィルターなどが使われるが、導電性の観点から銀や真鍮、銅などの金属によって製作されている。

衛星通信用デバイスを軽量化する試みの中で、UBCOの研究チームは3Dプリントを活用し、軽量導波管の製作を検討した。電磁波を伝送する導波管は、通信デバイスのみならず電子レンジにも使われており、さまざまなサイズの方形または管状の中空構造を持っている。ポリマー材料を使った3Dプリントによって軽量で複雑な構造を積層造形する技術は実用化されているが、これまで導電性が必要な通信デバイスに対しては適用されていなかったという。

研究チームは、ドレクセル大学により2011年に発見されたMXeneを、3Dプリントで造形した軽量ポリマー構造の表面にコーティングすることによって導電性を持たせることを考えた。MXeneは、3層のTiと2層のCで構成され、全体として原子5個分の厚さを持つ2D材料「Ti3C2」のことを指す。今では他の遷移金属原子Mと軽元素Xの組合せにも拡大され、「Mn+1XnTx」という組成式を持つ材料の総称となっている。導電性や電極活性など多様な機能を発揮でき、エネルギー貯蔵、電磁波障害遮蔽、透明導電体などさまざまな分野での応用が期待されている新素材だ。

研究チームは、ナノサイズの導電性MXene薄片を純水中に分散した後、3Dプリントにより造形されたポリマー製導波管表面にコーティングした。その結果、空気中乾燥後ポリマー表面に導電性を持たせることに成功し、低軌道周回衛星に対応する周波数帯8~33GHzにおいて導波特性を持つとともに、最大10dBの電力処理能力を示すことを確認した。

透過係数は93%であったが、これは従来の8倍も重い金属製に比べて2%低いだけであった。また、周波数/偏波フィルターおよびマイクロ波共振器などにも適用できることを実証した。研究チームは、「MXeneを利用した軽量積層造形ポリマー構造は、航空宇宙および衛星分野における通信デバイスの設計や製造に大きな影響を与える。また、MRI装置のような医療画像機器も含めて、チャンネル構造製作のための金属加工といった従来の製造方法を代替できるものだ」と期待しており、現在特許出願中だという。

fabcross for エンジニアより転載)

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