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ハーバード大、用途に応じて特性をプログラムできる液体「メタフルイド」を開発

Credit: Adel Djellouli/Harvard SEAS

ハーバード大学工学応用科学科(SEAS)の研究チームが、弾力性や光学特性、粘性を調節できるプログラム可能な「メタフルイド(メタマテリアル流体)」を開発した。空気で満たされ容易に変形する数十万個の微小球体カプセルをシリコンオイル中に分散させたもので、ロボットアームのグリップに封入して、圧力センサーを使わずともガラスボトルや卵、ブルーベリーを壊さずに優しく保持できることなどを実証した。

アクチュエータからロボット、衝撃の強さに応じてエネルギーを吸収するショックアブソーバー、透明から不透明まで変化できる光学デバイスなど、多くの分野に応用できると期待している。研究成果が、2024年4月3日に『Nature』誌に公開されている。

電磁波の波長よりも微細な機械的構造を利用して、物質の電磁気学的な特性を人工的に制御できるメタマテリアルが注目されている。例えば、透磁率と誘電率の両方を同時に負の値に制御することで、負の屈折率を持つ物質を作り出すことが可能となり、光の回折限界を超えていくらでも微細な構造を観察できる「完全レンズ」が提案されるなど、脚光を浴びるようになった。多くのメタマテリアル材は固体であるが、近年、磁場による移動集積が可能なナノ微粒子を溶液に分散させた「メタフルイド」が提案され、全く新しい光学デバイスの創出が研究されている。

研究チームは、プログラム可能な粘性や圧縮性、光学特性を提供できるメタフルイドの開発にチャレンジし、数十万個の空気で満たされた変形可能な50~500μmの球体カプセルを、非圧縮性シリコンオイル中に分散したものを創製した。液体の圧力が増大すると空気を含んだカプセルが変形してレンズのような半球状になるが、圧力が除去されるとカプセルは可逆的に球形に戻る。このようなカプセル形状の変化により、粘性や透明度など液体の多くの性質が変化するとともに、その挙動はカプセルの数やサイズを変化させることにより調節できることがわかった。

メタフルイドの応用可能性実証実験として、油圧ロボットのグリップに装入した。実験の結果、追加のセンサや外部制御系なしに、メタフルイド自体が様々な圧力に自発的に反応および追従して、重いボトルや割れ易い卵、小さなブルーベリーを適切に掴むように力を調節できることがわかった。

また、カプセルが球状のときは、光を散乱するのでメタフルイドは不透明になるが、圧力が負荷されてカプセルが変形すると、マイクロレンズのようになって光を透過し液体を透明にするなど、圧力変化に対して光学特性を変化させることができることも確認した。更に、カプセルが球状の場合はニュートン流体のように挙動し、粘性は温度のみによって変化するが、カプセルが変形した場合メタフルイドは非ニュートン流体に変化し、粘性はせん断力に対応して変化するようになり、ニュートン状態と非ニュートン状態の間で遷移することが初めて示された。

研究チームは、「大規模化が可能で作製が容易なメタフルイドの応用の可能性は極めて大きい」と語り、知的財産を保護するとともに、今後、音響および熱力学的な特性についても探求する予定だ。

fabcross for エンジニアより転載)

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