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損なわれた触覚を回復できる人工皮膚の開発

Credit: Korea Institute of Science and Technology

韓国科学技術院(KIST)の研究チームが、韓国の延世大学と成均館大学の研究者らと共同で、損なわれた触覚を回復できる「スマート・バイオニック人工皮膚」を開発した。同人工皮膚は、生体適合材料と電子デバイスを実装した触覚機能伝達システムを融合し、組み合わせたもので、恒久的に自然治癒不能な損傷を受けた触覚であっても、回復させることができる。

同研究成果は2024年1月2日、「Nature Communications」誌に掲載された。

皮膚疾患、やけど、外傷などによって皮膚の神経組織が損傷すると、生命維持活動に不可欠な感覚/認知機能が喪失するだけでなく、精神的/身体的な苦痛も生じる。自然治癒不能なほど損傷が深刻な場合には、患部に人工皮膚を移植する外科治療が必要になる。しかし、従来の人工皮膚は、皮膚の再生に重点を置いており、皮膚組織に近い構造と環境であっても、患者の感覚回復には至らなかった。

今回開発した人工皮膚は、皮膚の主成分であるコラーゲンとフィブリンから成るハイドロゲルであり、挿入された触覚センサーを通じて、微小な圧力変化を感知できる。感知した圧力変化は、ワイヤレス電源による周波数変調回路を介して電気信号に変換し、触覚神経インターフェース電極によって神経に伝達すると、人工皮膚が皮膚と同じ触覚機能を発揮する。

研究チームは、皮膚の弾力性と組織を結び付ける役割を担うコラーゲンとフィブリンが、創傷周囲で皮膚細胞の増殖と分化を誘発し、皮膚の再生を促進すると明らかにした。同人工皮膚の有効性を検証するため、皮膚に重度の損傷を負ったラットに移植したところ、移植から14日目で、対照群と比べて120%以上の創傷治癒効果を確認した。ラットは、ヒトの指先で触れる程度の10~40kPaの圧力変化に応じて、異なる反応を示した。

神経を損傷した患者では、皮膚が再生した後、皮下層の触覚センサーが作動するようになると、日常生活の自立度が大幅に改善する。感覚機能が低下した高齢者においても、高密度集積技術で作られた触覚電子デバイスを皮下に直接挿入することで、感覚機能の回復が期待できる。

研究チームは同人工皮膚を実用化するため、医療機関や企業と共同で追加の臨床研究を計画している。さらに、温度や振動、痛みなどの皮膚感覚を再構築する研究に展開する予定だ。

fabcross for エンジニアより転載)

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