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マグネシウム合金の3D積層造形でダイカストで不可能な形状を実現

積層造形サンプルの全体形状(約270×60×3mm)©三菱電機

三菱電機、熊本大学先進マグネシウム国際研究センター(MRC)、東邦金属、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年6月13日、ワイヤーレーザーDED(指向性エネルギー堆積方式)によるマグネシウム合金の積層造形技術を確立したと発表した。

4者はロケットの軽量化による抜本的な低コスト化に向けて、JAXAの「革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム」の枠組みのもと、2022年9月から共同研究を進めてきた。

マグネシウム合金の積層造形の原理 ©三菱電機 マグネシウム合金の積層造形の原理 ©三菱電機

マグネシウム合金をダイカストで鋳造する場合は、内部に空洞を持つ形状の造形が不可能だった。また、PBF(粉末床溶融結合)方式の金属プリンターではマグネシウム合金の粉末材料を用いた場合、酸化や粉塵爆発のリスクが高いことが課題だった。これらの課題を解決するため、熊本大学MRCが開発した「KUMADAI耐熱マグネシウム合金」を使用し、三菱電機が開発した金属3Dプリンターを組み合わせることに着目。東邦金属が製造したマグネシウム合金製ワイヤーを材料に、三菱電機が試験造形を繰り返し、燃焼させずに積層造形が可能なワイヤーの太さや伸線処理工程の最適化に成功した。

三菱電機のワイヤーレーザーDED方式の金属3Dプリンターでは、レーザーとワイヤーの出力をCNCで制御し、マグネシウム合金を燃焼させずに幅3mmでの積層造形が可能だ。ダイカスト法などの鋳造加工で必要な金型も不要で、金型の変更時や消耗による交換時のコストを低減できる。

同技術による積層造形後は常温での引張強度は約250MPaと、一般的なマグネシウム合金板材と同等の強度を保っている。また、高温(200℃)では多くのマグネシウム合金が常温時の半分以下に強度が低下するが、同技術による積層造形物は約220MPaと強度低下率が常温時の約10%に留まっている。

JAXAによる性能評価では、ロケット部位によって最大約20%の軽量化効果が見込まれる。またこの技術は、軽量化が要求される各種輸送機器やロボット部材にも幅広く適用可能だ。従来の鋳造加工に必要な金型が不要となり、金型の変更や交換のコストを低減する。また、マグネシウム合金の鋳造において温室効果ガスを使用せず、アルゴンガスを用いた局所パージ技術により、温室効果ガス排出量の大幅な削減が可能だ。

鉄やアルミニウムよりも軽量で高強度なマグネシウム合金を、より複雑な形状に加工できるため、ロケットや自動車、航空機などの部品材料に適用することで、軽量化による燃費向上とロケットのコスト削減が期待できる。2029年までに製品化を目指し、さらに詳細な材料特性を取得してロケット用部品の試作にも取り組む予定だ。

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