低温下でも優れた吸着性能を発揮——再利用可能なスポンジ状のオイル回収材を開発
2024/07/02 06:30
海洋への油流出事故は、迅速かつ効果的に浄化しなければ、海洋や沿岸環境に永続的なダメージを与える可能性がある。カナダの国立シンクロトロン光源施設であるCanadian Light Source(CSL)は2024年5月27日、カナダのメモリアル大学を中心とする北米の研究チームが、油を吸着する性質と油をはじく性質を切り替えることのできるスポンジ状の素材を開発したと発表した。切り替え機能により、繰り返し利用することが可能だ。
「CNF-SPエアロゲル」と呼ばれるこの特殊なスポンジ状の素材は、生分解性のセルロース系素材と感光性物質スピロピランを組み合わせたものだ。スピロピランの持つ切り替え機能により、エアロゲルは疎水性と親水性の性質を行き来する。可視光下ではエアロゲルは油吸着材として機能し、油を吸着した後に光を紫外線に変えるとスポンジは油を放出する。
CNF-SPエアロゲルの性能をさまざまな環境条件下で試験したところ、低温環境でも非常に優れた性能を発揮することがわかった。これは、カナダのように冬の寒さが厳しい地域では特に重要だ。
研究チームはこれまでに、CSLのMid-IR(中赤外分光器)を用いて、可視光および紫外線に暴露する前後のエアロゲルの特性を調べている。今後は、大規模なパイロット研究、さらにはフィールドでの試験と研究を拡大していく予定だ。
研究成果は『Science of The Total Environment』誌に2024年3月2日付で公開されている。
(fabcross for エンジニアより転載)