新工芸舎の個展が東京で開催——レトロと新しさが交差する新作群の展示
「新工芸舎」の新作予約販売会が東京 東銀座のSHUTLで2024年7月14日まで開催中だ。会場では新作の時計やラジオ、スツール、照明器具の展示/予約販売に加え、新工芸舎の作品を散りばめた特別展示を開催している。
新工芸舎は3Dプリンターを駆使した製品をデザイン/制作するクリエイティブチーム。糸状の樹脂を編み込んだようなデザインが特徴的なtilde(チルダ)シリーズを発表してきた。FFF(熱融解積層)方式3Dプリンターとソフトウェアを独自に改造、そのユニークな制作プロセスは過去にもfabcrossで紹介した。
3Dプリンターと素材をハックした芸術——京都「新工芸舎」が問いかける樹脂の価値|fabcross |
今回はtildeシリーズに続くANAMALOシリーズと、M600シリーズの作品を展示している。
ANAMALOは陳腐化した技術に、合理性とは異なる視点を盛り込むことをコンセプトとしている。ANAMALO Radioと称したラジオは筐体の裏に隠されがちなアンテナをあえて主軸に置き、ダイヤルやスイッチ、チューナーを手足のように配置したデザインは1970〜80年代のおもちゃを彷彿とさせる配色とデザインだ。またANAMALO Clockは時計のデザインを大胆に再構築。平面的な情報として時刻を伝えるのではなく、より立体的に時間を扱うオブジェのような時計が作れないかというアイデアがベースとなっている。
いずれも1980年代後半ごろに家電メーカー各社が発表した実験的かつ意欲的な家電に対するリスペクトを感じさせるデザインだ。
M600シリーズは立体データとフィラメント素材を変えるタイミングを合わせた装飾を活用したシリーズ。造形物を近くで注視するすると、色ごとに立体的な模様が確認できる。スツールの座面にはオフィスで見かけるカーペット生地、小型のチェストにはホームセンターで使われる樹脂製の取っ手を使うなど3Dプリント以外の素材のチョイスもユニークだ。
また、以前から発表しているTildeシリーズの新作も発表。透明な樹脂素材で編み重ねるようにして3Dプリントした後、樹脂用染料で着色したポータブル照明や、ランプシェードの小型モデルが展示している。
また、会場には中銀カプセルタワービルの一室に1970〜80年代の家電や新工芸舎の作品、RepRap 3Dプリンターなどが置かれた展示が公開している。
中銀カプセルタワービルは1972年に建築家の黒川紀章氏が設計した集合住宅。そのデザイン性の高さから国内外で高い評価を受けている建築だったが、老朽化などの理由から2022年に解体。内外装を竣工時に近づけて修復された部屋がギャラリー内に移設/展示している。
特別展示では「3Dプリントに関する特許が申請されず、30年早く技術が確立していたら」という設定の元、「1985年に中銀カプセルタワーをセカンドハウスとして持つ某メーカー本社勤めのデザイナー」の部屋を再現した。
1980年代のMacintoshからGコードを出力し、RepRap 3Dプリンターで造形したプロダクトに囲まれて暮らす「あり得たかもしれない過去」は必見だ。
展示は7月14日まで、東京 東銀座のShutlで開催中だ。土日は新工芸舎の面々も在廊する。
新工芸舎個展「新工芸舎新作予約販売会 2024夏」
会場:Shutl(東京都中央区築地4-1-8)
展示期間:2024年6月28日(金)~7月14日(日)13:00~19:00
※火曜、水曜は休業、最終日は17時まで
詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000120348.html