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新しいディープラーニング手法でレンズの設計期間を数カ月からわずか1日に短縮——モバイルデバイスのカメラ性能向上へ

© 2024 KAUST.

ディープラーニングによる新しい設計手法「DeepLens」により、光学レンズ設計の自動化が可能となり、従来の設計手法に比べて時間とコストの大幅な削減が見込まれる。この研究はサウジアラビアのアブドラ王立科学技術大学(KAUST)によるもので、2024年8月3日付で『Nature Communications』に掲載された。

深層光学最適化は、出力画像のみを目標として使用する計算イメージングシステムを設計するための新しい枠組みとして登場した。しかし、これまでは、回折光学素子やメタレンズのような単一素子から成る単純な光学系や、優れた初期設計から作られた複合レンズの微調整のみに限定されていた。

それに対し、今回開発された手法であるDeepLensは、「カリキュラム学習」という学習プロセスに基づいている。そもそも人工知能システムは、人間と同じように、指導なしで複雑なタスクをゼロから学習することは困難だ。例えば、人間は赤ちゃんの時に四つんばいの姿勢で進む動作を覚え、その後、2本の足で立つことを覚える。そして、2足歩行ができるようになってから、最終的にジャンプやダンス、スポーツを習得する。

同様に、カリキュラム学習では、反復的で段階的な構造化アプローチを使用している。複雑なレンズシステムの設計といった複雑なタスクを個々のマイルストーンに分解し、解像度、アパーチャー(開口部)サイズ、視野(FOV)といったイメージングシステムの主要なパラメーターに対する要求を段階的に高めていく。

また、この仕組みは出発点として人間ベースの設計を必要としないのも特長だ。その代わりに、それぞれカスタマイズされた形状と特性を持つ、複数の屈折レンズ素子を特徴とする複合光学系の独自設計を完全に作成でき、最も優れた全体性能を提供する。

このように、DeepLensのアプローチは複雑なレンズ設計を最初から最適化でき、その結果、経験豊富なエンジニアでも数カ月かかる手作業を、わずか1日の計算で完了するという大幅な効率化が可能となった。

このアプローチは、古典的な光学設計と、被写界深度を拡大した計算レンズ作成の両方で非常に効果的であることがすでに示されている。これは携帯電話サイズのフォームファクターであり、高非球面で短い後側焦点距離を持つレンズ要素を使用して広い視野を持つ。また、6枚構成の古典的なイメージングシステムでもテストし、設計仕様に適合するよう設計を調整しながら、その設計と光学性能の進化を分析した。

DeepLensは、顕微鏡からスマートフォン用カメラ、望遠鏡に至るまで、さまざまなデバイスで一般的な多素子屈折レンズの設計に特化したものだ。光学コンポーネントと計算コンポーネントとの間の複雑な相互作用を管理することに優れており、携帯電話のカメラが改良され、画質向上や新機能搭載の可能性があるという。

研究チームは、屈折レンズ素子だけでなく、屈折レンズを回折光学素子やメタレンズと組み合わせたハイブリッド光学系に、DeepLensのアプローチを拡張する研究に取り組んでいるという。これにより、イメージングシステムがさらに小型化され、分光カメラやジョイントカラーのデプスイメージングなどの新しい機能が可能になることが期待される。

fabcross for エンジニアより転載)

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