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イベントレポート

「CES 2015」チョコレート印刷や安価なフルカラー機が話題の3D Systemsブース

2015年1月6日から9日まで、米ネバダ州ラスベガスで消費者向け電気製品の展示会「International CES」(CES2015)が開催された。かつてはテレビやDVDプレーヤーなどを中心に賑わったこの展示会だが、2014年からは3Dプリンタ関連企業多数が出展して一大コーナーを作っている。それら企業ブースについてITジャーナリスト鈴木淳也氏のレポートを3回に分けてお送りする。

世界最大の家電展示会「International CES」ではここ数年3Dプリンタに関する展示が増えており、特に昨年2014年からは「3D Printing」という専門コーナーが用意され、関連展示がラスベガスコンベンションセンター(LVCC)のサウスホールにある一角に集められるようになった。今年2015年はこのコーナーがサンズコンベンションセンターへと移動し、さらに展示面積を拡大する形で来場者の関心を集めていた。本記事では中でも最大規模のスペースで展示を行っていた「3D Systems」ブースの展示内容を紹介する。

2015 International CESの3D Systemsブース。 2015 International CESの3D Systemsブース。

チョコレートをプリントできる「CocoJet」と安価なフルカラー機に注目

3Dプリンタで成形した楽器演奏でお出迎え。 3Dプリンタで成形した楽器演奏でお出迎え。
単一の3Dプリント生成物としては世界最大というチェアー型のオブジェクト。ProX 950を用いてSLA方式で印刷され、全体に銅メッキが施されている。 単一の3Dプリント生成物としては世界最大というチェアー型のオブジェクト。ProX 950を用いてSLA方式で印刷され、全体に銅メッキが施されている。

3Dプリンタを模した巨大な商談用会議室を中心に、最新の3Dプリンタ製品やその作例を多数展示配置していた3D Systemsブースだが、3Dプリンタで出力された楽器を使った演奏パフォーマンスやファッションショーがブースを横切る多数の来場者の目を引いていた。

だが今回最も注目すべき展示の1つが「CocoJet」というチョコレートプリントが可能な3Dプリンタ製品だ。菓子メーカー大手のHersheyとの提携で実現したもので、小さなサイズであれば、ものの十数~数十分程度で複雑な細工のチョコレートが出来上がる。CocoJetの隣には、ちょうど1年前に発表された、キャンディ細工を出力可能な「ChefJet」が設置され、お菓子屋さんのようなショーケースに作例の数々が紹介されていた。CocoJetと組み合わせれば、プロ用途でいろいろ面白い作品ができるのではないだろうか。

今回、他のブースでもさまざまな味のペーストを混ぜ合わせて食品プリントが可能な3Dプリンタのデモストレーションが行われていたが、料理の世界に3Dプリンタが本格進出するのも時間の問題かもしれない。 

今回「Best of CES」賞のファイナリストとなった「CocoJet」。チョコレート印刷が可能な3Dプリンタで、同社ブースでは最も注目を集めていた。 今回「Best of CES」賞のファイナリストとなった「CocoJet」。チョコレート印刷が可能な3Dプリンタで、同社ブースでは最も注目を集めていた。
こちらはちょうど1年前に話題になった「ChefJet」。キャンディ印刷が可能な3Dプリンタで、ショウケースにあるお菓子はすべてChefJetで作成されたもの。 こちらはちょうど1年前に話題になった「ChefJet」。キャンディ印刷が可能な3Dプリンタで、ショウケースにあるお菓子はすべてChefJetで作成されたもの。

CocoJetと並んで今回CESで初お披露目となったのが新製品の「CubePro C」だ。4990ドル(約59万円)と、フルカラー出力が可能なプリンタとしては比較的安価な価格設定で、グラデーションによる階調表現が可能だったりと、これまでハイエンド機でなければ難しかった3Dオブジェクトの出力がより身近なものとなった印象がある。

新製品の「CubePro C」。4990ドルという比較的安価な価格でフルカラー印刷が可能な3Dプリンタで、色を混ぜてのグラデーション処理が可能。 新製品の「CubePro C」。4990ドルという比較的安価な価格でフルカラー印刷が可能な3Dプリンタで、色を混ぜてのグラデーション処理が可能。

そしてソリューションのデモ展示としては、2014年末に商用サービスがスタートしたばかりの「3DMe」がある。キオスク型のタッチパネル端末で自分自身の顔をカメラで取り込みつつ、映画やゲームのキャラクターのコスチュームを着せてカスタマイズを行うことで、自分オリジナルの3Dフィギュアをプリントできるサービスだ。端末で会計を行うと、後に指定した住所に3Dフィギュアが郵送されてくる仕組みとなっている。

2014年末に商用サービスが開始された「3DMe」のデモ。キオスク型の端末はタッチディスプレイとなっており、自分の写真を貼り付けて好きなコスチュームにカスタマイズした3Dフィギュアを作成することができる。会計後はプリントされた3Dフィギュアが指定の住所へと発送してくれる。 2014年末に商用サービスが開始された「3DMe」のデモ。キオスク型の端末はタッチディスプレイとなっており、自分の写真を貼り付けて好きなコスチュームにカスタマイズした3Dフィギュアを作成することができる。会計後はプリントされた3Dフィギュアが指定の住所へと発送してくれる。

ファッションやアクセサリ関連の展示が中心に

CES2014の展示でいえば、作例としてはフィギュアや電子機器のちょっとしたオプションパーツが中心で、まだまだ限られた趣味の領域に近かったように思う。だがCES2015ではより実用的なものが増えてきた印象で、特にファッションやアクセサリ関係の展示が各社ブースで急増しており、3Dプリンタがファッション業界に深く浸透しつつある様子がうかがえた。その典型ともいえるのが3D Systemsに展示されていたオランダ人デザイナーのIris van Herpen氏によるドレス作品だ。

ファッション関連の展示が多かったのもCES2015の3Dプリンティングコーナーの特徴。写真の女性は3Dプリントされたドレスを着込んでいる。ただし使用している素材は硬質のプラスチックで、鎖かたびらを着込んでいるような感じだ。実際には写真のように服に編み込むことでアクセントとして利用するのが中心のようだ。 ファッション関連の展示が多かったのもCES2015の3Dプリンティングコーナーの特徴。写真の女性は3Dプリントされたドレスを着込んでいる。ただし使用している素材は硬質のプラスチックで、鎖かたびらを着込んでいるような感じだ。実際には写真のように服に編み込むことでアクセントとして利用するのが中心のようだ。

同氏はプロトタイピングとしての3Dプリンタの可能性にかなり早期から着目しており、自身のコレクションもこれを活用したものが占めている。もっとも、服そのものを3Dプリンタで出力するケースもあるものの、実際に同ブースで展示されていたものの多くは、元からある生地への3Dプリントでちょっとしたアクセントを加えた程度であったりと、オリジナリティを演出するための補助的な存在に留まっているように見える。今後素材のバリエーション増加や印刷技術の向上で、単なる演出だけではなく、より実用的な制作手段としてファッション業界での利用が広まっていくのだろう。

バッグや靴などでも3Dプリンタが利用される。ただし靴そのものを出力するわけではなく、写真の赤い部分のようにアクセントとして利用しているようだ。 バッグや靴などでも3Dプリンタが利用される。ただし靴そのものを出力するわけではなく、写真の赤い部分のようにアクセントとして利用しているようだ。
オリジナルアクセサリの作成は3Dプリンタの得意とするところかもしれない。ブレスレットのほか、時計のバンドにも利用されている。 オリジナルアクセサリの作成は3Dプリンタの得意とするところかもしれない。ブレスレットのほか、時計のバンドにも利用されている。
ファッション業界に3Dプリンタによるプロトタイピングを持ち込んで話題のオランダ人デザイナーIris van Herpen氏によるドレス作品。 ファッション業界に3Dプリンタによるプロトタイピングを持ち込んで話題のオランダ人デザイナーIris van Herpen氏によるドレス作品。

実用面という点では、義手や義足といった利用者ごとに細かいカスタマイズが必要な補助器具の作成にも3Dプリンタの活用が広まっている。例えば、会場に展示されていた「ProJet 4500」はハイエンド機にあたるもので、フルカラー対応のみならず複数の素材を組み合わせて出力可能だ。作例はフィギュアのようなものもあるが、同時に前述した身体活動における補助器具の作成も可能としており、工業や医療分野での本格活用も見込まれている。

今回会場に持ち込まれた3Dプリンタとしては最大級の「ProJet 4500」。フルカラーに加えて複数素材を組み合わせて出力することが可能で、写真のようなフルカラーフィギュアや義足など、さまざまな用途を提案している。 今回会場に持ち込まれた3Dプリンタとしては最大級の「ProJet 4500」。フルカラーに加えて複数素材を組み合わせて出力することが可能で、写真のようなフルカラーフィギュアや義足など、さまざまな用途を提案している。

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