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3Dプリンタ 未来と現実が錯綜する「ものづくりの革命」(上)

コンピュータ上で描いた様々な立体形状を速やかに実物にできる3Dプリンタ。米Wired誌元編集長クリス・アンダーソン氏の著書「MAKERS」の出版をキッカケに、その認知度は一気に高まりました。これとともに、3Dプリンタの普及によって個人が自由に製品を作れる時代がやってきたという見方が人々の間に急速に広がりつつあります。その一方で、3Dプリンタをめぐる盛り上がりを冷静に見る人たちも少なくありません。いったい3Dプリンタは、どのような未来を拓くのでしょうか。

3Dプリンタ、なぜブームに?

3Dプリンタとは、立体を出力する装置です。
グラフィック・ソフトウエアなどを使ってコンピュータ上で描いた3次元モデルのデータを基に、同じ形の立体を造形することができます。パソコンのディスプレイ上に書いた文字や図形を、プリンタを使って紙に印刷するのと同じように立体物を作ることができるわけです。

ここにきて、にわかに注目を集めるようになった3Dプリンタですが、製品化されたのは最近のことではありません。最初の製品が市場に登場したのは1980年代末のことです。すでに製造業では、試作工程などに活用する動きも進んでいます。最近になってブームが起きたのは何故でしょうか。ブームの背景には、個人でも所有することが可能な製品が出てきたことがあります。

小型化と低価格化で身近に

図1 3Dプリンタの例(イグアスの「Cube」)

かつて3Dプリンタは数千万円と高額で、かなり大きなものでした。ところが、2000年ころから低価格化と小型化が加速。最近では20万円以下で卓上にも置ける小型の製品が市場に登場しています(図1)。

ここまで安価で小型になれば、個人で所有することも無理ではありません。実際に、ある調査会社のレポートによると個人向け3Dプリンタの出荷台数は、この2年~3年の間に急増しています。

「3Dプリンタがあれば、高価で大型の加工装置を揃えたり、専用の工場を持ったりしなくても、自宅の机上で様々な部品や製品を作ることができる。」
「もはや誰もが『メーカー(製造者)』になれる。」
3Dプリンタの低価格化・小型化とともに、こうした可能性がにわかに現実味を帯びてきました。

こうした最中に3Dプリンタなどのデジタル・ツールがもたらす、ものづくりの新しい将来像を、一般向けに丁寧に説明した「MAKERS」が出版されたことで、3Dプリンタのブームに火が付きました。

「ものづくりに革命をもたらす3Dプリンタ」とセンセーショナルに採り上げるメディアが相次ぎます。個人によるものづくり、いわゆる「パーソナル・ファブリケーション」のムーブメントが、一般向けのメディアで採り上げられる機会が増えたのも、このころからです。

革新的な用途が次々と登場

実際に、3Dプリンタの可能性を先取りした新たな動きも出てきました。
例えば、フィンランドの大手携帯電話メーカーNokia社やスウェーデンの楽器メーカーTeenage Engineering社などが、3Dデータをインターネット上に公開。
3Dプリンタを使って個人が、アクセサリやオプション部品を作れる環境を提供しています。3Dプリンタを使って作品を作るアーティストも出てきました。

医療分野での応用も始まっています。
3Dプリンタで作った骨や内臓の立体モデルが、医師のスキルアップや患者への説明、医療機械の開発などに活用されているそうです。3Dプリンタを利用した製品のカスタマイズ・サービスを提供する企業も登場しました。

3Dプリンタを活用する動きは、様々な分野に広がっています。ところが、この一方で3Dプリンタのブームが行き過ぎだと指摘する人たちが出てきました。

続く

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