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FPGA ハードウエアもプログラミング(上)

いまやほとんどのエレクトロニクス機器に組み込まれているデジタルLSI。かつては、量産品に組み込むことを前提に半導体メーカーの大規模な工場で大量生産するものでした。ところが最近では、パーソナル・ファブリケーションの世界でも利用できるようになってきました。つまり、自分だけのデジタルLSIが一つから作ることができるようになりました。それを可能にしたのがFPGA(エフピージーエー)と呼ばれるLSIです。

FPGAの大きな“特徴”とは?

FPGAの正式名は「field programmable gate array」です。それぞれの単語の頭文字を並べるとFPGAになります(図1)。

図1 FPGAの外観 図1 FPGAの外観

FPGAは、デジタルLSIの一種です。半導体材料でできた小さなチップ(小片)に膨大な数の素子が集積されているのは、一般的なLSIと同じです(図2)。大きな特長は、ユーザーが、チップ上の回路を自由に構成できることです。

図2 FPGAのチップの例 図2 FPGAのチップの例

しかも、構成した回路は何度でも変更できます。工場から出荷されたFPGAには、回路の構成要素となる基本回路があらかじめ実装されており、この基本回路の組み合わせや接続を外部から変更することができるようになっているのです。一般的なLSIは、工場で回路が作り込まれており、これを変更することはできません。 

自分だけのLSIを一つから

FPGAがユーザーにもたらす大きな利点の一つは、カスタムメイドのデジタルLSIが一つから手に入ることです。一般的なデジタルLSIを製造するには、高度な技術を駆使した製造装置を使った微細加工が必要です。しかも、微小なチリやホコリ、微生物を極限まで除去した「クリーンルーム」と呼ばれる特殊な環境で製造しなくてはなりません。こうした設備を揃えるには莫大な資金が必要になります。たった1個のLSIを作った場合、とてつもなく高価なものになるでしょう。

このため一般的なデジタルLSIは、生産効率を高めながら大量に生産することで価格を抑えています。具体的には直径100mm~300mmの円盤状の半導体素材を使って1回の製造プロセスで大量の数のLSIチップを同時に製造しています。したがって、出来上がったLSIを大量に消費できる大企業でなければ、カスタムメイドのデジタルLSIを手に入れることはできません。

これに対してFPGAは、回路を構成していない状態。つまり何も書いていない“白いキャンパス”の状態では汎用品です。効率良く大量に製造してコストを抑えることができます。これを入手したユーザーが、回路をプログラミングすることによってカスタムのデジタルLSIになるのです。 

急速に身近になったFPGA

近年、FPGAそのものだけでなく、FPGAをプログラミングするための環境(ソフトウエア・ツール)も入手しやすくなりました。このおかげでFPGAは、個人でものづくりに取り組む人たちにも、身近な素材になりました。従来は大企業でなければ入手できなかったカスタムのデジタルLSIを、パーソナルなレベルで実現できるようになってきたのです。

日本で最初に開設されたFabLabの一つである「FabLab Tsukuba」を立ち上げたSUSUBOX代表取締役の相部範之氏は、FPGA開発のエキスパートです。相部氏は、FPGAを使った製品を開発するSUSUBOXを経営する一方で、個人でものづくりに取り組む人たちのためのカフェ「FPGA-CAFE」を2010年5月にオープンしました。このカフェが現在、「FabLab Tsukuba」としても運営されています。

身近になってきたFPGAですが、その市場をリードしているのは、米Altera社と米Xilinx社の2社です。市場シェアの約80%を両社の製品が占めており、寡占状態になっています。この2社は、市場だけでなくFPGAの技術もリードしています。後半では、FPGAの歴史を振り返りながら、FPGAに関する最近の技術動向を説明します。

後編に続く

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