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FPGA ハードウエアもプログラミング(下)

パーソナル・ファブリケーションの分野で話題になる機会が増えたFPGA(エフピージーエー、field programmable gate array)ですが、市場に登場したのは約40年も前です。その後、半導体製造技術の進歩とともに応用範囲が広がってきました。最近では、FPGAとマイコンを融合した新基軸の製品も登場し、FPGAの用途が一段と広がっています。その先が、パーソナル・ファブリケーションの領域にも及んでいます。

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LSIの主流となったFPGA

FPGAのように、回路がプログラミングできるLSIが、市場に登場したのは1970年代のことです。このころはPLD(programmable logic device)と呼ばれていました(図1)。

図1 プログラミングできるLSIの分類 図1 プログラミングできるLSIの分類

半導体の加工技術が進歩するにつれて、一つのPLDに集積する回路の規模が拡大。PLDの性能も向上し、コストも下がりました。これらとともに用途が広がっていきます。この過程で、「SPLD(Simple PLD)」「CPLD(Complex PLD)」と呼ばれる製品がPLDの仲間として登場しました。このように登場したさまざまなPLDの中で、比較的回路規模が大きい製品がFPGAと呼ばれるようになり、最近では回路がプログラミングできるLSIの主流はFPGAになりました。

回路がプログラミングできるLSIが市場に登場した当初は、集積されている回路規模が小さかったことや、最近の製品ほど高速で動作する製品がなかったことから用途が限られていました。しかも、回路の中核ではなく、周辺部に使われているケースがほとんどでした。例えば、産業用機器や業務用機器など比較的高額で生産台数が少ない機器です。最近では薄型テレビ、デジタル・ビデオ・カメラ、ハードディスク・レコーダといったAV機器など大量生産する製品にも使われています。しかも、FPGAが回路の中枢を担っている機器も少なくありません。電子化が進んでいる自動車にもFPGAが使われるようになりました。 

マイコンを内蔵したFPGAが登場

半導体技術の発展を背景に進化してきたFPGAですが、そのトレンドをリードしてきたAltera社とXilinx社は、高級機から低価格品まで幅広いニーズに対応できるように複数のFPGAをシリーズ展開しています。例えば、Altera社は、「Stratix」「Arria」「Cyclone」。Xilinx社は、「Spartan」「Artix」「Kintex」「Virtex」といったブランドのシリーズを提供しています。それぞれのシリーズは網羅している回路規模の範囲や、搭載している機能が違います。

このほかに両社は2010年ころにFPGAをベースにした新基軸の製品を相次いで発表しました。マイクロプロセッサとFPGAを一体にした製品です。具体的には、Altera社の「Altera SoC」。Xilinx社の「 Zynq-7000 All Programmable SoC」です。いずれの製品も、英ARM社が開発したマイクロプロセッサを内蔵しています。市場で多くの実績があるマイクロプロセッサの技術を活用しながら、FPGAの領域を使ってユーザーが自由に回路を構成できるこれらのデバイスは、いわゆる組み込み機器の回路の合理化やパフォーマンス向上に貢献すると、それぞれのメーカーは利点をアピールしています。 

パーソナルなものづくりにもFPGA

従来は多額の資金や大規模な設備が必要だったカスタムメイドのデジタルLSIは、FPGAが身近になったことによって個人でも手に入るようになりつつあります。実際に、パーソナルなものづくりにFPGAが大きな可能性をもたらすことを感じさせる動きも出てきています。例えば、「FabLab Tsukuba」を運営するSUSUBOXが開発した「Kariomon System」です(図2)。

図2 SUSUBOXの「Kariomon System」 図2 SUSUBOXの「Kariomon System」

これは、短期間かつ低コストで電子機器が試作できるシステムです。FPGAを搭載したメインボードと、さまざまなインタフェース回路を搭載した複数のサブボードが用意されており、メインボードに必要なサブボードをブロックのように組み合わせるだけで、電子機器の基本システムが構成できます。

さらにメインボードの中に組み込まれているFPGAをプログラミングすることで、必要な機能を実現できます。こうしたシステムを利用すれば、最初から部品を集めて試作機を作る場合に比べて、開発期間やコストを大幅に抑えることができるはずです。簡単にシステムが試作機を作れるようになれば、より多くの人がそれぞれのアイデアを生かした電子機器を開発できるようになるかもしれません。現在、SUSUBOXでは、このシステムを自社の受託開発に利用していますが、一部改良のうえ2014年中に発売する予定です。

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