7万円で初心者も使える本格派3Dプリンター Adventurer3実機レビュー
2018年7月16日、FLASHFORGEの日本総代理店であるApple TreeはFFF(熱溶融積層)方式3Dプリンター「Adventurer3」を発売開始した。FLASHFORGEはこれまで「Finder」や「Inventor」など5万円から20万円台まで幅広い価格帯の3Dプリンターを展開しているが、Adventurer3は6万4600円と比較的低価格帯の機種である。今回はその実機を触れる機会を得たので、その使い心地や実力を検証する。
FLASHFORGEのWebサイトにAdventurer3の特徴がまとめられている。こちらの特徴を見ていきながら実際いくつか出力しチェックしていく。
コンパクトながら造形サイズも確保
送られてきた段ボールを開けると、まずマニュアルや電源コードなどが緩衝材の上にあり、緩衝材を取ると本体が出てくる。緩衝材が発泡スチロールではなく、紙製なのでゴミが散らからず地味にありがたい。
本体重量は9kgなので少し重いが、設置してみると扉付きの3Dプリンターの中では確かにコンパクトな印象がある。外形サイズは388×380×405mmと、これまで同社で最小であったFinderよりひと回り小さい。しかし造形サイズは150×150×150mmと、小型の3Dプリンターとしては十分なサイズが確保されている。
設置から10分かからない3Dプリントの流れ
Adventurer3は本体組み立て済みなので、内部の運送用固定パーツを外して電源をつなげばすぐにプリントができる。本体に向かって右側にフィラメントを収納し、内部にあるエクストルーダーにフィラメントを挿入する。ドライバーと六角レンチが付属しており、エクストルーダーの掃除やメンテナンスも簡単にできるのはとてもありがたい。
本体正面にはタッチパネルが付いていて、PCを接続しなくても操作、メンテナンスができる。ノズルとプラットフォームの距離の調整も簡単で、ノズルがプラットフォームに触れたところを目測で確認してOKボタンを押す仕様になっている。この仕様のおかげでこれまでのように微妙な隙間に紙を挟んで公正する手間も無くなり、積層ピッチによって1層目の高さを変えるなどの調整も容易にできるようになった。
出力の対応データ形式はSTL、OBJ、3MFなどのメッシュ形式に加えてPNG、JPGなどの画像データも対応している。これは、Webサイトからダウンロードできる専用のソフトのFlashPrintに、画像の明暗から立体的な凹凸を作る機能が付いているためで、3Dデータを作れない人にも簡単に好きなプリントデータを作れるようになっている。プリンターに送られるGコードは.gxという拡張子だが、FlashPrint以外のスライサーで書き出したGコードも、.gや.gcodeなどの拡張子を.gxに書き換えるとAdventurer3にデータを送信することができた。また、データの送信はUSBとWi-Fiに対応しているが、本体側のメモリー容量がある程度あるのでWi-Fiで一度データを送信していれば繰り返し同じデータを出力する場合にパソコンを使わずに済む。
テストプリント用のデータとして、本体メモリーにあらかじめ入っていた立方体をプリントしてみた。稼動音45dBと静音をうたうAdventurer3だが、扉を閉めると可動部分が完全に覆われるため確かに静かに感じた。ただし、稼働音よりも排気ファンの音が大きく、静かな部屋だと少し気になる。
造形完了すると短い音楽が流れ、プラットフォームが手前に移動する。プラットフォームは手前のつまみをつかんで本体から取り外せるようになっており、少し曲げることで造形物が簡単にプラットフォームから外すことができる。将来的には現在開発途中のクラウドサービス「FlashCloud」と本体内部のカメラ(現在は機能していない)が連携して、造形の様子を離れた場所から確認できるようになる予定だ。