新しいものづくりがわかるメディア

RSS


7万円で初心者も使える本格派3Dプリンター Adventurer3実機レビュー

0.05mmピッチが滑らかなPLA、反りに注意したいABS

付属のフィラメントは赤いPLAであったが、比較のために純正のABSを用意した。まずはそれぞれデフォルト設定での出力をしていく。

共に0.05mmの積層ピッチで出力したデータ 共に0.05mmの積層ピッチで出力したデータ

0.05mmの積層ピッチはAdventurer3の最小積層ピッチだが、実際に出力物を見てみると側面がかなり滑らかに出力できていることが分かる。出力の設定はデフォルト設定だが、上の面などもきれいにふさがり、細かいところも出力できている。PLAは熱による反りや収縮が少ないのでどれもサポートを付けずに出力をしたのだが、多少オーバーハングのある箇所でも問題なく出力してくれている。

上段:ABSではネジやヒンジなどの機構っぽいものを出力。 下段:サードパーティ製のフィラメントスプールを掛ける棒も出力してみた。 上段:ABSではネジやヒンジなどの機構っぽいものを出力。
下段:サードパーティ製のフィラメントスプールを掛ける棒も出力してみた。

一方でABSを使う場合は出力に注意が必要だ。PLAではラフト*を付けなくても多くのものがきれいに出力できたのに対し、ABSはどうしても反りやすい性質があるためラフトを付けないと出力中に造形物が剥がれてしまうことがあった。ラフトを付ければ造形物が多少反ったとしても、造形の失敗はかなり少なくなるのでABSではラフトを付けるのをお勧めしたい。

Adventurer3は、総じて純正フィラメント、デフォルト設定で造形をする限りでは、かなり安定した出力をしてくれる。10時間を超えるような出力を何度かしている上に、開封してから1kg以上のフィラメントを出力し続けているが、ノズル詰まりなどの不調は起こっていない。仮にノズルが詰まったとしてもワンタッチでヒーターユニットごと取り外しができ、交換部品もECサイトから3500円と手頃な価格で購入できる。

*ラフト:プラットフォームとの設置部分が小さな造型物をプリントする際に、プラットフォームから剥がれにくいように設定する薄い台座のようなもの。

エキスパート向けのプリント設定も選択可能

標準モードとエキスパートモードのスライス/プリント設定画面の違い 標準モードとエキスパートモードのスライス/プリント設定画面の違い

マニュアルには純正フィラメントおよびメーカーが承認したフィラメントを使うように記載されているが、FlashPrintのプリント設定にはエキスパートモードというものがあり、このモードでは出力の設定をかなり細かく設定することができる。このため、プリントスピードや温度を調整すればさまざまなフィラメントを出力することができる。ただしノズルの設定温度は最高235℃なので出力推奨温度が高温なものは出力しづらい。

自宅にあったフレキシブルフィラメントで出力してみた造形物。

フレキシブルフィラメントは、一般的に出力のスピードを遅くし、積層ピッチは層間が剥離しないように小さめで出すなど調整が必要な素材であるが、FlashPrintのエキスパートモードで何度か調整すると、途中でちぎれることなくきれいに出力できた。

まとめ:気になった点とAdventurer3を買うべき層は

特筆すべき欠点はなかったAdventurer3だが、いくつか気になる点もあったのでここでまとめていく。まず、プラットフォームの水平に関して。Webサイトにもキャリブレーション不要とあり、実際本体の設定項目にも高さの校正はあるが水平の校正は無い。プラットフォームの下を覗くと片側が固定されており、もう片方がベアリングでスライドするようになっている。この仕組みで水平は上手くとれているのだが、造形範囲で広く出力しようとすると若干ではあるが高さにムラがあるように感じた。ノズルとベッドの隙間がキツイところにマスキングテープを貼るなどしてアナログに水平を微調整することはできるが、今後使用し続けていく場合に水平のズレがどの程度発生するのか、校正した場合は修理するしかないのかは気になるところである。

また、FLASHFORGEでは20℃から200℃までノズルを暖めるのに50秒とうたっているとおり、ノズルが暖まるのがとても速いのは大変魅力的だが、デフォルトのGコードではプラットフォームが温まるまでノズルの温度は上昇しないため、ABSなどプラットフォームを高温にする必要がある樹脂の出力は造形開始まで時間がかかるだろう。これはデフォルトのスタートコードを書き換えることで、プラットフォームとノズルを同時に暖めて出力開始までの時間を短縮できる。Flash Printのアップデートで改善されることをぜひ期待したい。

一通りAdventurer3を使ってみた感想は、「初めての3Dプリンターはこれが良かった……」というようなところである。1台数十万円するようなFFF方式の3Dプリンターの出力物と比べてしまうと、確かにもっと細かいところまできれいに出力できるものもある。ただしこれまでの同価格帯の3Dプリンターと比べるとその精度はかなりよく出力が安定している。またエントリーモデルだからといってプリント設定項目が極端に少ないわけでもない。見た目もスッキリしていて扉も付いているので自宅や学校、職場などどんなところにも置きやすいだろう。Adventurer3は良い意味で“何も考えずに安定して出力できる3Dプリンター”として、初めての人から3Dプリンターで少し凝ったことをしたい人まで、広い層に使いやすい機種だといえるだろう。

ヘラクレス像の出力:長時間のプリントも安定していた ヘラクレス像の出力:長時間のプリントも安定していた

関連情報

おすすめ記事

 

コメント

今人気の記事はこちら

  1. 子どもからmakerまでArduinoの活用法を学べる——ステップバイステップ電子ガイドブック「Arduino for Everyone」
  2. お座りや伏せができる——リアルな犬のアクションフィギュア「スタイリッシュ ワンワン」
  3. 集めたデータをグラフ表示できる——IIJ、個人向けIoTデータ可視化/監視サービス「Machinist」を提供開始
  4. スイッチサイエンス、M5Stack製AIカメラとSipeed製AI開発ボードを発売
  5. シャーレ上でヒト毛包の生成に成功——3Dプリンターを活用した毛髪再生治療法の研究
  6. 電子部品をクラウド化——「オーダーメイドPoCキット」シリーズ販売開始
  7. KiCad 5.1攻略本が付属——CQ出版、「トランジスタ技術2019年8月号」発刊へ
  8. LED線光線で高精細スキャンニング——ジュエリー用3Dスキャナー「D3D-s」
  9. 「企業内メイカースペースは、社内外の垣根を越え、つながりを作る」Microsoft、Googleの取り組み
  10. MIT、画像認識力を向上させる点群データの識別手法を開発

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る