【寄稿】台湾の高級中学にファブ施設が続々オープン
「受験勉強だけが教育ではない」学校内ファブラボを進める台湾の今
世界各地に広がり続けるファブ施設のネットワーク「ファブラボ」。教育の現場にもファブラボを取り入れる動きが進んでいます。ファブラボ関内の立ち上げに関わり、教育の観点からファブラボの研究に取り組む宮城教育大学の門田和雄准教授に台湾における学内ファブ施設の現状について寄稿いただきました(編集部)
台湾のFabLab事情
台湾のファブ施設が続々と増えている。日本にFabLab鎌倉とFabLabつくばがオープンしたのは2011年5年。2016年4月現在、日本国内には16カ所のデジタルものづくりの市民工房FabLabが存在する。同じアジアの台湾には2013年5年にFabLab台北、続いてFabLab Dynamic、FabLab台南がオープンした。2015年5月には台北でFabLab Asia Network 2nd Conference(FAN2)が開催されるなど盛り上がりを見せており、2015年には国立高雄師範大学内にFabLab NKNUがオープン。今年はFabLab台北の規模拡大や台南の北部に新たなFabLabが生まれる予定だ。
著者は2013年8月、横浜にオープンしたFabLab関内の立ち上げメンバーであり、以来、各国のファブラボと交流を持ってきた。なかでも飛行機で3時間もあれば行き来ができる台湾のメンバーとは活発に交流を続けている。2013年8月に横浜で開催された世界ファブラボ代表者会議(FAB9)にFabLab台北のメンバーが来日したことがきっかけとなり、2014年に台湾を初めて訪問してから、2015年、2016年と今回で3度の訪問となった。
台湾に一度でも出向いたことのある方なら、日本人にとても親しく接してくれる人々、手仕事を大事にするものづくりの文化、数多く残されている古き日本を感じる建物、そしてもちろん各地にあるおいしい食べ物などに魅かれたことがあるだろう。一方で、市街地におけるWi-Fiの充実振りに驚き、自作3DプリンタのグループRepRap.Taipeiでは、連日、活発な情報交換が行われるなど、技術的な関心事も多い。ちなみに、日本と台湾を行き来する旅行者は年々増加しており、2015年は500万人を突破したという。
そんな台湾のファブ施設がますます充実していることを実感したのは2015年12月に横浜で開催されたFabLearn Asia2015でのこと。「つくりながら学ぶこれからの教育」がテーマとなったこの国際会議で、新北市立中和高級中学の実践校特別プレゼンテーションを聴いたときに、すでに学内にファブ施設を設けて活動していることに衝撃を受けた。今回、この学校の訪問に加えて、台湾滞在中に国立台湾師範大学附属高級中学にてFabLabのオープニングセレモニーがあるというお話を伺い、こちらも訪問することができた。本稿では、主にこの2校の訪問を紹介しながら、台湾における学内ファブ施設の様子を報告したい。