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【寄稿】台湾の高級中学にファブ施設が続々オープン

「受験勉強だけが教育ではない」学校内ファブラボを進める台湾の今

国立台湾師範大学附属高級中学

国立台湾師範大学附属高級中学での式典。 国立台湾師範大学附属高級中学での式典。

2校目に訪問した国立台湾師範大学附属高級中学は、地下鉄の淡水信義線で台北駅から5駅の台北の中心地にある。日本統治時代の1937年に開校(台北州立台北第三中学校)した伝統校であり、資料室を見学させていただいたところ、初代校長は日本人の大欣鉄馬、校歌の作詞はこの校長、作曲は赤とんぼなど歌謡曲の作曲者として知られる山田耕筰だった。男女共学で全校生徒は約3100人、男女比は2:1であり、自由な校風というところは日本の国立大学附属学校と似ていると感じた。ちなみに、男子では台北市立建国高級中学が最難関のエリート男子校であり、この学校は男子では二番手。女子ではここがトップ校とのことである。

国立台湾師範大学附属高級中学内のファブ施設の様子 国立台湾師範大学附属高級中学内のファブ施設の様子

この学校のファブ施設は1年ほど前から活動しており、この日はこの間の活動を踏まえたうえでの式典だった。台湾のファブラボ仲間に同行していただいたおかげで、きれいな講堂に100名ほどが集まった式典に、私も参加させていただくことができた。各方面から学校関係者が集まる中で、校長に引き続き文部大臣にあたる教育部部長らの挨拶があった。配布資料によると、政府の教育政策で創客教育(Maker)を育成する自造実験室が数校指定されており、この学校は7番目とのことである。師大附中の英訳を意味するのか、このファブ施設は「附製工房(Fi-Lab)」と名付けられていた。教室には大きなレーザーカッターが1台に3Dプリンタが複数台、スキャナもあり、壁には液晶モニタが複数並んでいた。この他にコンピュータ室や木工室などもあった。この学校でも用途は生活科技の授業を中心であり、この他に、美術コースや科学コースなどのコースでこれらの施設を使用した授業が行われている。

式典後の施設見学のときに日本人が来ているということが伝わり、校長や教育部部長にご挨拶をさせていただき、一緒に記念撮影もした。翌日このときの写真が台湾・教育省のWebサイトのトップページに掲載されたことには驚かされた。

まとめ

近年、世界中の教育でSTEM教育という言葉をよく聞く。ここでSTEMとは、Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、 Mathematics(数学)の頭文字であり、これらを総合的に学ぼうとする取り組みである。そこではさまざまな実験やプログラミング、ものづくりなどの活動が行われており、ここに3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタルファブリケーションを盛り込んだ取り組みも各国で行われている。今回の台湾の高級中学でのファブ施設の設置も、この流れの中に位置づけられるものと思われる。

一方、日本の小学校や中学校でこれらの教育に取り組んでいる事例は一部の私立学校にはあるものの、公立学校ではほとんど見られない。普通科の高校にはそもそも技術を学ぶ科目すらないが、台湾の普通科の進学校に続々とファブ施設が作られていることは大いに示唆に富んでいる。日本のほとんどの普通科の高校では、ものづくりをほとんどせず、理数科目を学ぶだけで工学部に進学している。創造力を働かせて若いうちからオリジナルの作品を製作できる力を備えておくことは、自らの進路を切り開いていくためにも大いに役立つはずである。 

校長や教育部部長らと記念撮影 校長や教育部部長らと記念撮影

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