経済産業省に聞く——日本のハードウェアスタートアップに立ちはだかる3つの課題とは
経済産業省は2016年6月17日、平成27年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国ものづくりベンチャーの動向等調査)成果報告書を公開した。ハードウェアスタートアップ業界の第一線で活躍する有識者や企業の代表を交え、国内のハードウェアスタートアップを取り巻く環境と現状について調査したもので、多くのMakersに立ちはだかる壁が何か、どのように対処していくべきなのか、事例も含め紹介されている。
行政から見たハードウェアスタートアップの課題と解決への道筋について、このレポートを取りまとめた三菱UFJリサーチ&コンサルティングの北 洋祐氏と経済産業省製造産業局の榊原風慧氏にお話を伺った。
経済産業省は2013年10月に、3Dプリンタが生み出す付加価値と今後のものづくりの方向性を考察した「新ものづくり研究会」という有識者会議を立ち上げ、2014年2月に報告書を公開。2014年から2015年にかけては、国内のMakersを海外に派遣する「フロンティア・メイカーズ事業」を実施するなど、ハードウェアスタートアップの動向調査や支援の取り組みを続けてきた。
2016年版のものづくり白書で、全国の企業に経営変革の一環としての取り組みについてアンケートを取ったところ、オープンイノベーションの推進やベンチャー企業との業務提携に対して意欲があると回答する企業が増加傾向にあることが分かったという。しかし、一方でスタートアップが製品化にこぎつけるまでには、さまざまなハードルがあり、試作や資金調達の段階で頓挫するケースも少なくないのが現状だ。そこで、行政としての支援のあり方を明らかにするためにスタートしたのが今回のプロジェクトだ。
スタートアップを阻む3つの壁
我が国ものづくりベンチャーの動向等調査は、3人の有識者を委員とした「メイカーズ2.0研究会」に企業の代表を招いた3回の定例会と、関係者への訪問調査に基づいている。そこで寄せられた意見を整理すると、主に「量産化」、「資金調達」、「事業策定」という3つの課題があるとしている。
量産化については、主に試作、量産パートナーとスタートアップとの連携面に課題があるとしている。具体的には国内のパートナー企業に問い合わせても社内確認などでレスポンスが遅い一方で、海外パートナーでは問い合わせしたその日のうちにSkypeなどで打ち合わせして短時間で意思決定できるようなスピード感の違いから、海外パートナーに量産を発注したといった国際競争力の問題や、情報不足やコミュニケーション不足から発注先にスケジュールを握られ、会社の運転資金がショートしたり利益が大幅に圧縮されたりするといった、さまざまな事例が報告書で紹介されている。