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経済産業省に聞く——日本のハードウェアスタートアップに立ちはだかる3つの課題とは

このような連携不足が起きる原因として、報告書では「常識の違い」、「取引に伴うリスク」、「情報不足」、「スピード感」の4つを指摘している。

平成27年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国ものづくりベンチャーの動向等調査)成果報告書18ページより 平成27年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国ものづくりベンチャーの動向等調査)成果報告書18ページより

こういった状況に対し、スタートアップと試作/量産メーカーを繋ぐコーディネーター的な存在の必要性を報告書は説いている。

「京都でMakers Boot Campを運営する牧野(成将)さんに参加いただきましたが、Makersのアイデアをブラッシュアップして、京都試作ネット(京都の中小企業100社以上が加盟する試作ネットワーク)につないでいくような仕組みもできつつあります。そういった、中間に立つ人や組織にMakersが迷うことなくアクセスできる状態を作る必要性は感じています」(北氏)

また、地域をまたいだ連携をすることで、各地域の得意分野を生かした受注体制を作ることも重要だという。

「例えば、新潟の燕三条のように金属加工に強い地域が電子機器に強い地域とシームレスにつながると、対応できる案件の幅も広がるでしょうし、相談する側にとっても頼む内容ごとに個別に相談する手間を省けることになり、スタートアップが品質の高い製品を国内で量産できる事例も出てくると思います」(北氏)

平成27年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国ものづくりベンチャーの動向等調査)成果報告書23ページより 平成27年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国ものづくりベンチャーの動向等調査)成果報告書23ページより

ハードウェアスタートアップへの投資が少ない日本

二つ目の課題である資金調達においては、ハードウェアスタートアップへの投資案件の少なさや、補助金を受けるための手続きの煩雑さや使いにくさといった問題点を挙げている。

「日本はスタートアップへの出資がとにかく消極的、という意見が非常に多く集まりました。研究会の委員である小笠原(治)さんもおっしゃっていましたが、エンジェル投資家やメンターなど、シーズ段階から支援する人や企業が、海外と比較して圧倒的に不足しているというのが現場の意見としては大きいようです」(北氏)

量産化の壁、資金調達の壁がある中で、最も問題視しているのが三つ目の事業計画策定スキルの不足だ。これが量産化と資金調達の壁を乗り越えられないものにしているという指摘もあった。

「企画から試作、資金調達、量産を経て販売までつないでいくという一連の流れを描く力が、プロジェクトの成否を決める大きな要素になっていると感じています。クラウドファンディングで資金を集めても、量産を引き受ける企業が見つからずに失敗してしまうケースや、量産できたとしても予定から大幅に遅れてしまうケースが相当数あります。大手メーカー出身の人材がいるスタートアップは、工場の人脈や量産の段取りを理解しているので立ち上がりが比較的早いのですが、市場の裾野を広げていくためには、メーカー出身者がいなくてもきちんと出荷まで漕ぎ着けられるような教育や外部支援が必要になっていくと思います」(榊原氏)

「量産と資金の問題を検討していく中で、なぜうまくいかないのかを突き詰めていくと、ロボットキット『Rapiro』の量産を手掛けたミヨシの杉山(耕治)さんもおっしゃっていましたが、ちゃんとした事業計画を立てられる人が少ないことに尽きるという意見がありました。試作や量産に入る前に事業計画書をまとめ、パートナー企業にもゴールまでの過程がわかるようにしておくと、試作や量産を請ける側の企業もノウハウを生かして、コストや工数を抑えるといった工夫ができ、プロジェクトが成功する可能性が一気に高くなります。ただ、ちゃんとした事業計画が無いために、量産化の相談を受けるパートナー企業が、その事業に協力する価値があるかどうか判断できない事例も多いのが現状です」(北氏)

アクセラレーターブームは誰のためのもの?

報告書では試作や中・少量生産に優れた企業が日本には多いことに触れ、価格面でもロットが比較的小さい場合は中国と比較しても優位性があり、品質とコスト面を両立できる可能性があるとしている。しかしながら、現状では企業とスタートアップ双方が歩み寄ることは難しく、両者をコーディネートする機能が圧倒的に不足しているというボトルネックもある。

「大企業によるアクセラレーターがブームになっていますが、日本全体が世界中のスタートアップから頼られるような状況を最終ゴールと考えるなら、中小企業もスタートアップと事業を展開していく必要があります。しかし、資本体力の問題から、なかなかそういった事例が増えていかない。それを解決していくのが行政の役割でしょうし、大量生産は中国に任せて、日本は付加価値の高い試作や中・少量生産で国内外の需要に応えていき、それに伴って日本のスタートアップの成功事例も一つ一つ積み重ねていくというのが、今後Makersを産業に組み込んでいくために必要な取り組みだと思います」(北氏)

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