ワイン造りからゲームまで、冬休みにチャレンジしてみたいラズパイ作例集
ホビーだけでなく教育やビジネスの世界でも活用されている「Raspberry Pi」(以下、ラズパイ)。そして、低価格かつフレンドリーなインターフェースで人気急上昇中の「micro:bit」。どちらも2018年を通じてfabcrossで紹介すると反響が大きかったシングルボードコンピューターです。この2つのデバイスを冬休みに買って触ってみたい、もしくは来年に向けて試作したいものがあるという人も多いのではないでしょうか。
そこであなたの創作意欲を刺激しそうな作品の実例集を2日連続で紹介します。今回はRaspberry Piの活用事例です。(前回のmicro:bit作例集はこちらです)これらを実際に買って作るも良し、また参考にして新たな作品も作るも良し。ぜひトライしてみましょう。
ゲームをハックするためのラズパイ
世界中で人気のゲーム「マインクラフト」。ラズパイで動作するバージョンにはPython用のライブラリが用意されているので、マインクラフトで使えるデバイスを自作することも可能です。
日本のラズパイユーザーグループ「Japanese Raspberry Pi Users Group」立ち上げ時からのメンバーで、イベントでも作品を出展する「あっきぃ」さんは、コントローラーを使わずにジェスチャーでゲーム内のキャラを操作できるデバイスを開発しました。指の動きを三次元の空間座標でセンシングする「Skywriter HAT」というデバイスを使い、センサーに触れると画面が空からの視点になり、手を動かすとキャラクターを移動させたり地面に近づけたりすることができます。
あっきぃさんによれば、ラズパイのデモ展示にあたって、子どもにとって身近なマインクラフトを使って子どもたちに遊んでもらおうということで制作したそうです。実際に展示するとイベント終了まで子どもたちがこぞってマインクラフトに夢中になって遊んでいたとのことで、子どもウケは抜群。あっきぃさんがデモプレイを披露すると、Skywriter HATに興味を示す子どもも少なくなかったそうです。子どもに、ちょっといいところを見せたいお父さんには絶好の作品ではないでしょうか。
また、海外では本格的なレトロゲーム用のゲーム機をラズパイで作った例もあります。仕事仲間でプライベートでもゲーム仲間だったエンジニアとデザイナーが組んで起業したイギリスのPimoroniは、レトロゲーム愛にあふれたゲーム機「Picade」を開発しました。
Picadeは8インチのディスプレイと筐体、専用のボードのキットで、ラズパイとmicroSDカードと組み合わせることで、1980~90年代を彷彿とさせるアーケード用のゲーム機になります。2012年にKickstarterで資金調達して製品化に成功。現在はPimoroniのWebサイトで購入できます。
パブリックドメインとしてWeb上で公開されているゲームもいくつかありますが、オリジナルのゲームを開発してみるのも良いでしょう。Pimoroniによれば、モニターのサイズが17インチで、二人用プレイに対応した「Picade Pro」も準備しているとのこと。親子で組み立てることで、ゲームに対する愛を親から子に受け継ぐことにPicadeは一役買っているそうです。
IoTでワイン造り
ここまでホビー寄りの事例を紹介しましたが、自分の仕事にラズパイを活用するケースを紹介しましょう。
山梨県甲州市でワイナリー「ヴィンヤード・キクシマ」を開業準備中の菊島邦夫さんは、できるだけ農薬に頼らないブドウ作りを目指しています。農薬の散布を必要最低限に抑えるためには畑の環境データの計測が必要不可欠ですが、既成品は「それなりにいいお値段」になるため簡単には導入できません。
そこで菊島さんはラズパイに温湿度センサーを組み込んだ自作の百葉箱を畑に設置。2019年春のワイナリーオープンに向けて改良を進めています。現在、事務所内に設置されたWi-Fi経由でTwitterにデータを自動投稿していますが、次のステップではIoTデバイス用のSIMカードを使って、Wi-Fiの圏外でもデータが取得できるようにしたいとのことです。
菊島さんは利用事例が豊富にWebに公開されていて、デバイス自体もネット通販で入手しやすいことから、プログラミング未経験ながらラズパイを使った計測システムの自作にチャレンジ。見よう見まねではあるものの、自分で組み上げる楽しみがあると菊島さんはラズパイで作る醍醐味を教えてくれました。
ラズパイを活用した国産ワイン、ぜひとも飲んでみたいですね。
いろんな場面で広がる「それ、ラズパイでつくれるよ」
Japanese Raspberry Pi Users Groupによれば、このほかにも高専生による模擬人工衛星のコンテスト「缶サット甲子園」でラズパイを組み込んだ人工衛星が出展され、別のコンテストで作品の存在を知った本国のRaspberry Pi財団が強い関心を示すなど、ユニークな活用事例が日本には数多くあるそうです。
あなたも自分の身の回りの人や出来事をラズパイで少しだけ変えてみませんか?
取材協力:Japanese Raspberry Pi Users Group、山口耕司