新しいものづくりがわかるメディア

RSS


アジアのMakers by 高須正和

Maker Proのためのクラウドファンディング、Quickstater——個人や小チームが、フルタイムでなくホビーで始めるプロジェクトのために

もともと映画の制作費を集めるために始まったKickstarterは、大きな社会現象になり、多くのスタートアップがここで勢いづくことになった。一方でレベルの上がったクラウドファンディングはプロフェッショナルの場所になり、もともとの理念だった「コミュニティに応援される同人プロジェクト」というキャラクターは薄くなった。Kickstarterは6月18日にQuickStarterという小規模プロジェクト促進を始める。

Maker Faire Bay AreaでQuickstarterの構想を話してくれたKickstarterのコミュニティマネージャーJulio Terra。インタビューのビデオはスイッチサイエンスのブログに掲載した。

小規模プロジェクトに向けた誘因策

Kickstarterは過去にいくつか「prompt」(駆り立てる、刺激するなどの意味。プロジェクトでもキャンペーンはKickstarter内で別の意味を持つため、この記事では誘因策と訳す)と彼らが呼ぶ動きをしたことがある。また毎年1月にはmake/100という「バッカー(支援者)を100人に限定したプロジェクト」という誘因策を行い、特設ページを作っている。今回のQuickstarterもそれに近いものになる。

100人だけを対象にした小規模プロジェクト向け誘因策 make/100 100人だけを対象にした小規模プロジェクト向け誘因策 make/100

make/100もQuickstarterも狙いは似ていて、今のKickstarterハードウェアプロジェクトの中心になっているフルタイムのスタートアップ企業(最近では大企業のこともある)が仕掛ける数億円規模のキャンペーンと違う、小規模なプロジェクトにも、焦点が当たるようにするということだ。

Quickstarterとは

たった今(6月4日)KickstarterコミュニティマネージャーのJulioから、「先ほど会議を終えて、Quickstarterの概要を決めた」というメールを受け取った。そのメールには、先のmake/100の紹介に加えて、Quickstarterの概要として以下のことが記されている。

Quickstarterは小規模で楽しみのために行われているプロジェクトを誘引するためのものだ。たとえばロンドンのデザイナーOscar Lhermitteが作ったこれのような。Oscarはクリエイティブなプロジェクトを引き起こすための原則をいくつか作ってくれた。これをすべて厳密に守る必要はないが、Quickstarterはこういうものだ。

Quickstarterの原則(括弧内は筆者の捕捉)

  • スケッチベースのアイデアから、Kickstarterのキャンペーン(資金調達開始)開始まで3カ月以内
  • キャンペーンは20日以内に終わる
  • 資金調達の目標は1000ドル以下
  • 一つのリワード(支援)が50ドル以下
  • ビデオの撮影は1日程度で、もともと自分が持っているカメラ(スマートフォンのものを強く推奨)で撮影したもの
  • 自分で行う以外の、PRやメディア広報は禁止
  • ソーシャルメディアでの有料広告禁止
  • ストレッチゴールはなし(資金調達が目標を大きく超えた場合の追加ゴール。例えば総額100万円が目標だが、総額300万円まで行ったら全員にケースをプレゼント、など)
  • キャンペーン名にQuickstarterを含める
ゲージのついたステッカー、Quickstarter。このようなシンプルだが興味深いプロジェクトを増やすために、KickstarterはQuickstarterという支援策を始める。

プロの仕事とクラウドファンディング

これはちょうど、今のKickstarterキャンペーンで多く行われていることへのアンチテーゼだ。僕の住んでいる深センはハードウェアスタートアップが多く、彼らを相手にしている専門のビデオ業者がいる。ハードウェアスタートアップのアクセラレーターであるHAXは、ラボの中に撮影スタジオと専門のチームがいて、ビデオの撮り方を指導/研鑽している。「一発でユーザに届き、シェアされる製品名や写真を試行錯誤するために、メールアドレスだけ登録するページを作って、いくつもSNS広告を出してみてタイトルを検証する」など、プロにはいくつものノウハウが溜まっている。HAXが公開しているHAX Crowdfunding Guide 2017にはSNS広告を試したときの効果などがレポートされ、「これはフルタイムの仕事だ」と強調されている。

HAX Crowdfunding Guide 2017から、彼らのプロジェクトの一つNURAというヘッドフォンの、Kickstarterキャンペーン効果検証。Facebook広告が大きな成果を上げている。 HAX Crowdfunding Guide 2017から、彼らのプロジェクトの一つNURAというヘッドフォンの、Kickstarterキャンペーン効果検証。Facebook広告が大きな成果を上げている。

よりMaker Pro、同人ハードウェアのためのクラウドファンディング

もちろんこうしたプロの仕事とホビーのプロジェクトはどちらも素晴らしいものだ。このNuraというヘッドフォンは僕も支援したし、コミュニティという要素がプロの仕事でも不可欠になりつつあるのはよいことだと思っている。一方で、僕が所属していたニコニコ学会βという団体でクラウドファンディングを仕掛けたとき、自分は直接の担当者ではなかったけど、工夫を凝らしてなんどもSNSでシェアしたり知人にメールしたり、「クラウドファンディングは大変だなあ」という印象を受けたことを覚えている。その後自分たちのイベントAkiPartyでスポンサー集めをしたり、同人誌を出したりしたが、クラウドファンディングはやっていない。

Quickstarterであれば、「面白そう、やってみようかな」と思える。Maker Faire Bay Areaでは多くのブースがKickstarterでプロジェクトをしていて、オフラインでのイベントに加えてオンラインでもつながれるのは素晴らしいことだと感じた。自分たちのプロジェクトがKickstarter上で世界に広がるのは面白そうだ。

今回の記事を公開することで、fabcrossの読者からQuickstarterのプロジェクトが多く生まれるとうれしい。

今人気の記事はこちら

  1. Raspberry Pi Set第2弾——RSコンポーネンツ、カメラやディスプレイなどをセットにした「Autumn Set」5種類を発売
  2. 無料3D CADや基板CADの基礎を学ぶセミナーから、1日でコンピューターを自分で組み立ててプログラミングを学ぶワークショップまで(11月8日~)
  3. 水中環境やルアーのアクションをセンサーで計測できる「スマートルアーα」
  4. ハードウェアこそが日本が世界で戦える武器になる——Makers Boot Campの挑戦
  5. それ、ラズパイでつくれるよ——人類史上最も無駄のないノートPC。をつくれるよ
  6. 課題を解きながらAIロボットプログラミングを学ぼう——Arduino互換ロボットDIYキット「MoonBot」
  7. ムーアの法則とハードウェアスタートアップ——オープンソースハードウェアの時代はこれから来る
  8. micro:bitでロボットプログラミング——モジュラー式組み立てロボットキット「Qdee Robot Kit」
  9. それ、ラズパイでつくれるよ——日本語音声認識もできるよ!
  10. レゴ、高さ1mの「ヴェスタス風力発電タービン」を発売——環境問題への取り組みを強調

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る