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大学から始まるものづくりの今

デジタルとアナログを横断できる人材を——東海大学のものづくりデザイン思考

デジタルファブリケーションなどの広がりによって誰もがものづくりできる時代において、従来の木工や溶接といったアナログなものづくりとデジタルツールをどう融合させていくかを考えることが求められている。東海大学教養学部芸術学科では、デジタルツールとこれまでのアナログなツールを横断的に使えるこれからのデザイナーを育成しようとしている。同大学が行っている、ものづくりの教育現場のあり方について聞いた。(撮影:加藤甫)

東海大学は1946年設立、総合大学として文系科目から理系科目まで23学部を設置している。文理融合を掲げ、分野や専門教育だけではなく、理系も文系も互いの講義を受講することができる。そのなかで、デザインの学びの場として教養学部芸術学科デザイン学課程が設けられている。

「単純な芸術教育やデザインの専門教育だけではなく、学際的な視点の中でデザインをどう捉えるかを考え教えている」

そう語るのは、同大学教養学部芸術学科教授でキャリア支援センター所長の戸谷毅史氏だ。自身もインダストリアルデザイナーとして長いキャリアをもちながら、20年以上に渡り学生たちにデザインについて講義を行っている。

東海大学教養学部芸術学科教授でキャリア支援センター所長の戸谷毅史氏。 東海大学教養学部芸術学科教授でキャリア支援センター所長の戸谷毅史氏。

グラフィックやプロダクト、インテリアなどさまざまなコースがある同学科は、早い時期から大学内に工房を抱え、製図や木工、溶接などを学ぶ場を設置し、日夜学生や教授たちが作業を行っている。1980年代には、光造型機や当時企業でも導入が始まったばかりのCADソフトを大学で使えるようにし、3Dデザインをいち早く取り入れた。2008年頃には、Afiniaの3Dプリンタ「UP! Plus」を導入するなど、3D造形に力を入れている。

デジタル工房にはレーザーカッターや3Dプリンタ、IllustratorやPhotoshop、動画編集ソフトなどをインストールしたパソコンが設置してあり、作業を行う学生たちで賑わっているという。 デジタル工房にはレーザーカッターや3Dプリンタ、IllustratorやPhotoshop、動画編集ソフトなどをインストールしたパソコンが設置してあり、作業を行う学生たちで賑わっているという。

「CADでものづくりをするのが今後は当たり前になると考え、すぐに導入を決めた。基本的なことをきちんと学べる環境が整ってきたことで、教師も学生たちも工房の機械を使う頻度が高くなってきた」(戸谷氏)

キャンパス内にある工房には、さまざまな工作機械が設置してある。 キャンパス内にある工房には、さまざまな工作機械が設置してある。

東海大学は企業との連携も盛んで、住宅用の内装金物事業を展開するアトムリビンテックとは、学生らとプロダクトデザインに関してテーマを設定し、学生自ら考えて作品制作までを一貫して行う産学協働カリキュラムを行っている。「一般的な産学連携と違い、企業が学生を育てようとする姿勢があり、一緒にカリキュラムを構築し作品制作を支援する考えで、これまで7年間実施してきた」と戸谷氏は話す。

キャンパス内にアトムリビンテックとの産学連携で制作した作品が展示してある。 キャンパス内にアトムリビンテックとの産学連携で制作した作品が展示してある。

福祉現場の課題をデザインで解決するためになにができるかを学生たちに考えさせるために、毎年夏に行われる展示イベント“ヨコハマ・ヒューマン&テクノランド”に作品を出展させている。こうした取り組みを通じて、工作機械を駆使してプロダクトを制作し、大学内だけでなく外部の人たちともつながりながら一緒にものづくりをする機会を設けている。

「ものはソフトが作るわけではなく、人のニーズや課題があり、それを人が解決するためにデザインがあるということを(学生に)理解してもらいたい。そのために、実際に使うシーンやテーマに沿った、実践的な取り組みを積極的に行っている」(戸谷氏)

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