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3Dプリンターと光るフィラメントを使って暗闇合コンしてみた

読者のみなさん、積層方式の3Dプリンターを使ったことはありますか? あるという方は、どんなフィラメント(材料)を使っていますか? PLA? ABS? 多くのメーカーから発売されていてポピュラーなのはこの2種ですが、実はその他にも、一見使いみちの分からない個性的なフィラメントがたくさん発売されているのをご存知でしょうか?

本記事では数あるフィラメントの中で筆者が気になった、蓄光フィラメントを使ってどんなことができるか試してみました。

蓄光フィラメントとは?

光を蓄える性質の材料でできていて、これを使ってプリントしたモデルに光を当てておくと、暗闇の中で発光します。数社から同様の機能を持ったフィラメントが発売されていますが、今回はユニチカ製の「PLA蓄光フィラメント」を使ってみました。

何を作ろう?

“自分がデザインしたものを暗闇で光らせることができる!”

漠然とワクワクするものの、具体的に何をしようかと思いあぐねていたところ、こんな言葉に出会いました。

「暗闇合コン」

まるでなじみのない響きですが、文字通り暗闇の中で行われる合コンを指すらしく、調べてみたところ各所で本当に行われているみたいです。顔が見えづらいためルックスではなく中身で相手を判断できることや、暗闇による不安感がもたらすつり橋効果(不安や恐怖を感じているときに出会った相手に恋愛感情を持ちやすくなる効果)などを狙っているよう。

「やってみたい!」

やってみた

参加資格は蓄光フィラメントで自ら3Dプリントした光るアイテムを持参できること。厳しい条件のなか、無事男2女2の暗闇合コン開催が決定。参加者はこの4人です。

(左上)学生のK さん。 右上:fabcrossライター仲間の淺野さん。 左下:同じくfabcrossライターの渡辺さん。 右下:筆者。今回の合コンの幹事。 (左上)学生のK さん。 (右上)fabcrossライター仲間の淺野さん。
(左下)同じくfabcrossライターの渡辺さん。 (右下)筆者。今回の合コンの幹事。

人数は集まったものの筆者を含め全員が暗闇合コンはもちろんのこと、普通の合コンすら未経験。誰ひとりとして正解が分からないまま、光る謎物体片手に会場に集まりました。

3Dプリントしたものたちが青緑に光る中、とりあえずビールで乾杯。参加者が作ってきたものを早速紹介しましょう。

Kさんが作ってきたのはカチューシャ。

暗闇の中、耳だけ光ってカワイイ。

Kさん「既存のカチューシャのカーブに合わせてモデリングするのが大変でした」

3Dプリンター初心者ながら頑張って作ってきた彼女。自らカチューシャを着け暗闇のなかモデリング方法を力説。普通の合コンなら洋服やメイクに気合をいれるところですが、暗闇合コンではカワイイ光り物で勝負。

女性陣でそろって着用。大人にもなってどういう顔で猫耳を着ければいいか分かりませんでしたが、暗闇で誰にも表情は見えないのでノープロブレム。

淺野さんが作ってきたのも身に着けるアイテム。

全部蓄光フィラメントでできているため光量がとにかくスゴイ。

淺野さん「初めての合コンで怖かったし正直恥ずかしかったんです。だけど自分の存在はどうしても主張したかったので光るサングラスを作りました」

宙に浮くサングラスがなんともシュール。わずかな隙間から相手のこともちゃんと見えると言います。表情は読めないけれど、陽気な人であることは伝わってきます。

渡辺さんが作ってきたのは合コンには欠かせない、王様ゲーム用のグッズ。

蓄光フィラメントでプリントしたところだけが暗闇で光る。

渡辺さん「暗闇でも見えるように、番号だけでなく持ち手の部分も蓄光フィラメントで作りました。数字は出力が大変だし見にくそうだったので、輪の数で番号が分かるようにしました」

合コンのためとは思えないほどよく考えられたデザインに場は大盛り上がり。早速王様ゲームスタート。

通常の王様ゲーム同様ひとりずつクジを引いていきます。持ち手が光っていると確かに取りやすい。

王様を引いたのは淺野さん。Kさんが作ってきた冠のカチューシャもしっかり着用。先ほど「合コンなんて恥ずかしい」と言っていたのがうそみたいに陽気な風貌に。相手の顔が見えにくい分、普通だったらできないことや言えないことにも挑戦できるのも暗闇合コンの良さだと感じました。

筆者が作ったのは食べ物に刺すピック。

シュークリームに刺さった言葉が暗闇のなか浮かび上がる。

筆者「初めての合コンだったので事前リサーチとして合コンイロハをメチャクチャググりました。ググっていくうちに、“使うとモテるさ・し・す・せ・そ”とやらがあると知りモチーフにしました。みんな合コン初心者だったので机にあると会話しやすいと思ったのも狙いです」

これらのピックが刺さったシュークリームを使って、王様ゲームと並ぶ2大合コンゲーム(?) ロシアンルーレットに挑む。5個中1個がわさび入りです。それぞれ好きなモテワードを選んでいくと……。

筆者は「知らなかった」を選択。口に含むやいなや「すごい」がわさび入りだと気づくKさん。

Kさん「これ本当に食べなきゃダメですか」

淺野さん「じゃあ僕がもらいます」

ロシアンルーレットの意味もむなしく、暗闇の中「すごい」シュークリームをあーん。

リアクションが醍醐味のゲームなのに、表情が何一つ読み取れない。

淺野さん「辛いというよりシンプルに美味しくないです」

初合コンに始めこそ緊張したものの、徐々にお酒も会話も進み夜は更けていきました。最後に集合写真をパシャリ。

みんな結構楽しそう。

やってみて分かったこと

実際にデータ作りから合コンまでやってみて、筆者が気付いたことやコツを紹介します。これから蓄光フィラメントを使ってみたいと思っている人は参考にしてください。

1. データ作り

王様ゲームや食用ピックのように一部を目立たせたいモデルの場合は、その他の部分を光らないマテリアルでプリントすると、コントラストがはっきりして蓄光部分をより生かせます。逆に細かなデザインではなくとにかく光量が欲しいときはサングラスのように全部蓄光フィラメントで作ると良いでしょう。

2. 3Dプリント
蓄光フィラメントは、特殊フィラメントではありますが特にプリント時のトラブルはなく、筆者が日頃使っているPLAのスライス設定でスムーズにプリントすることができました。メーカー推奨ノズル温度は210~250℃と、通常のPLAよりやや高めなため、その設定だけ変更してプリントすることをお勧めします。

3. モデル
当然ですが、蓄光フィラメントで作られたモデルは蓄えた分しか光ることができません。合コン中、光が弱くなってきたと感じたら周りの人に光を当ててもらうと良いでしょう。

無事に光を取り戻したサングラス。

2人体制でライトを当ててもらえば、レインボーブリッジに勝るとも劣らない輝きを放つ。

後記

3Dモデリング時に、ノーマルなフィラメントとは全く異なる、蓄光フィラメントならでは気遣いやコツが必要なのが新鮮でした。暗闇合コンも初めての試みでしたが、暗闇のなか未体験のことをみんなで乗り越えていくことで打ち解けることができ楽しかったです。また新しいフィラメントに出会えたら紹介したいと思います。

以下のリンクから今回制作/使用した3Dモデルをダウンロードできます。暗闇合コンのご予定がある方はぜひご利用ください。

1. 冠のカチューシャ(stlモデル)
2. 王様ゲームグッズ4本(stlモデル)
3. 「さしすせそ」ピック5本(stlモデル)
4. サングラス(thingiverseリンク)

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