持ち運びに最適、見た目もかわいい実力派——キーボード一体型「Raspberry Pi 400」日本最速レビュー
小型マイコンボードとして圧倒的な人気を誇るRaspberry Pi。その最新型である「Raspberry Pi 4」を組み込んだキーボード一体型パソコン「Raspberry Pi 400」が2020年11月2日に発表された。
日本での取り扱いは2021年以降に予定されているが、これまで何度もラズパイのお世話になってきたfabcrossとしては、いち早くその性能を確かめたいところ。国内の代理店を務めるスイッチサイエンスの全面協力により実現した最速レビューをお届けする。
※本記事は「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」を利用し、必要な手続きを事前に申請し、法規に則った形でレビューしています。
国内では未発売の貴重なシロモノ。扱う手も震えそうだが、ここは当fabcrossの人気企画「それ、ラズパイでつくれるよ」を担当する江川さんにレビューしてもらおう。過去の作例も交えつつ、Raspberry Pi 400のファーストインプレッションをお伝えする。
見た目はキーボードそのもの! 省略されたコネクターも
まずは外観から。見た目はキーボードそのものといった印象。白と明るい赤紫のツートンカラーが特徴的で、よく見るとスタートメニューの呼び出しキーにはRaspberry Piのマークも印刷されている。今回お借りしたものはUS配列だが、国内流通時には日本語配列にも対応する予定とのこと。
背面はこんな具合。グッとラズパイらしくなる。左から、GPIO40ピン、マイクロSDカードスロット、micro-HDMIポート×2、電源用USB Type-Cコネクター、USB3.0ポート×2、USB2.0ポート、Gigabit Ethernetコネクターが並ぶ。
Raspberry Pi 4にあったアナログオーディオ/ビデオ出力用の3.5mmジャックや、カメラモジュールをつなぐ端子など、一部のコネクターが省略されていることには注意したい。
起動までは30秒、Webサイト閲覧もサクサク
さて、早速Raspberry Pi 400を起動してみよう。
背面のスロットにmicroSDカードを挿し、各種コネクターに必要なケーブルをつないでいく。32GB microSDカード、HDMIケーブル、ACアダプター、マウスはすべて同梱されるらしく、まさにオールンインワンでスピーディに起動できそうだ。
電源を入れてからデスクトップで作業可能になるまでに要した時間は、およそ30秒。今回お借りしたものは各種設定が済んでいたが、初回起動時にはユーザー設定などでもう少し時間がかかると思われる。
続いて、標準のブラウザー(Chromium)でWebサイトを閲覧してみる。江川さんいわく「Raspberry Pi zeroや Raspberry Pi 3で感じたもっさり感がなく、普通に快適に利用できる」。普段のネットサーフィンと同じように、サクサクとページを読み込めるようだ。
YouTubeなどで動画を見る際は、最初に少し時間がかかるそう。それでも、一度読み込んだ後には問題なく動画を再生できていた。
背面のGPIOでLチカ! 拡張ボードは形状に注意
お次はラズパイを用いた開発で多用する、GPIOピンを使ってみよう。Raspberry Pi 400のGPIOピンはキーボード背面にあり、これまで通りメスのコネクターで配線できる。
標準のプログラムエディター「Thorny Python IDE」でLチカのプログラムを書き、ものの数分でLチカが完成。配線やコードは「趣味から仕事まで使える!Raspberry Pi(ラズパイ)の使い方とオススメキット」を参考にした。
GPIOを使うタイプの拡張ボードも挿し込めた。ただし、Raspberry Pi 400のGPIOピン周辺には余裕がないため、ボードの形状によっては本体と干渉して挿し込めない可能性がありそうだ。
カメラとスピーカーはUSBでつなぎ、 Twitter botやビデオ会議も問題なし!
最後に、カメラとスピーカーを試してみる。
先に書いた通り、Raspberry Pi 400にはカメラモジュールを挿すコネクターやアナログオーディオ/ビデオ出力用の3.5mmジャックがないため、映像や音声の出力にはHDMIかUSBポートを使う必要がある。今回はUSBカメラとUSBスピーカーを用意した。
Hello world from #raspberrypi400 pic.twitter.com/mBzBBstxBy
— kazme.sleeps (@kazmesleeps) November 23, 2020
「それ、ラズパイでつくれるよ——画像の自動ツイートもできるよ!」のプログラムをRaspberry Pi 400に移植し実行。USBカメラで撮影したRaspberry Pi 400の様子がしっかりアップロードされている。
こちらは新型コロナ禍で頻度が急増したビデオ会議。WebRTCで映像や音声を配信できる「Momo」を使い、お互いの映像や音声に大きな遅延やカクツキもなく、スムーズなやりとりができた。
使える機材は限定されるが、カメラやオーディオの入出力も可能なRaspberry Pi 400。ただし、Raspberry Pi 400本体のインターフェース設定でカメラを「無効」から「有効」にすると、本体が起動しなくなるというエラーが発生した。おそらくカメラモジュールの利用を想定していないことに起因すると思われる。USBカメラはインターフェースの設定が「無効」のままでも利用できるので、くれぐれも「有効」に変更しないよう注意されたい。
どこにでも持ち運べる、軽くて頼れる1台
セットアップからWeb閲覧、GPIOやUSBアクセサリー接続など、一通りの機能を試すことができた。検証を進めてくれた江川さんに、感想を聞いてみよう。
江川「デバイス単体で完結しているのが最高です! 僕はいつも学校か自宅など、ディスプレイのある環境で活動しているので、これさえ持ち運べばどこでも作業やビデオ会議ができます。キーボードの軸を感じる打鍵感もかなり好みでした。周辺機器をたくさん使う場合にはUSBハブを足す必要がありますが、その辺は臨機応変に対応すれば良さそうです」
セットアップや持ち運びの簡単さが、リモートワークの広まる世相とマッチしていたようだ。開発機や日常使いの1台として、新たな選択肢に入りそうなRaspberry Pi 400。日本での発売を楽しみに待とう。
企画協力:スイッチサイエンス