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部品自作 超入門講座

回路やソフトだけじゃ物足りない。自作部品でエレ・メカ工作「基礎の基礎」【3】

3DプリンターとCNCフライス、それから板金加工と、部品加工の種類とその使い分けが分かったところで、次は手始めに実際に自分の身の回りで役立つものを作る方法を考えていきましょう。「役立つもの」ということは、「今、困っていることを解決できるもの」と言えます。例えば、はんだ付けのときに基板や部品を固定するとか、材料を切るあるいは穴を開けるときものの固定を自分の手の代わりにやってくれるような、簡単な道具はいかがでしょうか。

今回のテーマ:加工方法を踏まえた設計の基本的考え方

第1章:動く仕組みを観察して似たものを自作できないか考えてみる

ここに工作用のホビーバイスがあります。バイスは、ノブを回して口金を開閉させて物を挟んで固定する道具で、これは幅50×長さ85×高さ35mm程度の小ぶりなものです。

このバイスはコンパクトで良いのですが、口金を最大に開いたときの幅が33mm程度なので、これ以上厚い物を挟むことはできません。そこで、コンパクトさを保ちつつ、これよりも口金の開きが大きいバイスを自作できないか考えてみます。

裏返して見てみましょう。黄色いノブを回すことで中央の部品がスライドして、口金を開閉する作りになっています。この機構は、1回目で紹介した「送りねじ機構」に似ていますよね。

裏側を拡大して仕組みを観察してみます。向かって右側(黄色いノブ側)の、ボルトが通っている部分はねじ切りされていません。ただボルトを通すだけの穴になっています。

向かって左のボルトの先を見ると、黄色い円で囲んだ部分のネジ山が削り取られていて抜け止めの部品が付いています。

抜け止めの部分を拡大して見ると、よくある部品を組み合わせていることが分かりました。しかし、ネジ山を削って穴を開けてピンを入れるのは手間がかかりますね。

口金の裏がナット役をしているので、ここだけがネジを回すことで動きます。これがこのバイスの開閉の仕組みです。その部分を拡大してみると、スリットに支えられて平行にスライドするようになっていることが分かります。

では、口金以外の場所にナット役をさせたら動きはどうなるでしょうか。ボルトの挿入口をナット役にしたら、作りが簡略化して楽に作れそうに思えてきました。

そうしたら、観察で気づいたことや思ったことをメモに書き出します。

  • ボルトのネジ山を受けるナットはどこかに一つあればいい。
  • 口金を平行にスライドさせるには、スリットでガイドすればいい。
  • 口金は市販のナットと自作部品を組み合わせれば作れそう。
  • 他人に見せるものじゃないので、機能重視で見た目は妥協。

こんなところでしょうか。

その次に考えるのはこの2つです。
(1)買う部品と作る部品の区別
(2)部品の作り方(できるだけ安上がりで楽な方法をとる)

(1)については、「ボルト」「ナット」を購入品としてリストアップして、それ以外を自作する部品としておきます。(2)については、部品の役割と形状を見て低コストに収まる加工方法を検討します。

こうして頭の中でだいたいの構想ができたら、次にそれを紙にスケッチしていきます。

第2章:ものづくりの土台は手描きのスケッチ

どんなものを作るかが決まったら、構想を手描きでスケッチします。これは設計の土台になる大事なもので、俗に「ポンチ絵」と呼びます。「描く」とか「書く」という行動は、頭の中のイメージを整理して、具現化しやすくする手段だったりします。絵を描くのが苦手でも気にせず、「他人が見ても、ものの概要が分かる絵」を描くことを心がけましょう。そうすると、後から自分が見ても、それがどういう思惑で描かれたものなのかがすぐ分かるからです。

ポンチ絵を描くポイントとしては、次の3つを心がけてください。

  • 基本的には、斜め上から見た絵を描く。
  • 寸法、材質、使う市販部品の名前と型番など、作るために必要なことはできるだけ書き込む。
  • ものの形状がよく分かるように、外形線はやや太い線で描く。

それでは、各部分で押さえておきたいポイントを見ていきましょう。まず、ボディー、本体部分です。丈夫に作りたいけれどお金もかけたくないので、合板の土台に金属製の部品を乗せていく方式で進めてみます。

次に口金です。バイスの目的は「物を挟むこと」なので、挟むものとの接触面は平らでなければいけません。それから割れたり欠けたりしないように金属製がよさそうです。この部品は切削加工で作るとより良いのですが、加工難易度の低い板金加工で作ってみます。

ノブは、強度もいらないので3Dプリンターで作ればいいですね。ボルトのネジ径に合った穴を設けて、接着か圧入かネジ込みかいずれかの方法で取り付けることとします。

口金を平行にスライドさせることについては、口金の裏側に突起になる部品(スライド用のコマ)をつけて、それが溝の中を動くようにしてみます。突起を受ける側は、合板の土台に溝を掘るだけでなく、その上に安定感を出すためにスリットを入れた、ガイド用のアルミ板を一枚重ねます。

とにかく、ポンチ絵を描きながら構想を固めていく感じです。そうして描けたポンチ絵がこれです。構成が分かるように分解図のように描いてみました。

ここまで出来たら、次のステップとして3D CADを使って詳細を詰めながら、自作部品のモデル作成をしてみましょう。ポンチ絵=下書き→3D CAD=清書。そんな感覚です。モデル作成をしながら全体を調整することで、ポンチ絵の段階ではあいまいだった細部の形状や、ちゃんと決まっていなかった寸法もそこで確定することになります。

ここまでが構想設計の基本的な流れです。自作したら買うより高くついてしまったら面白くありませんよね。市販部品をうまく使いながらなるべく手間を掛けずに安く作る。だけど機能はバッチリ。これを鉄則に、設計にチャレンジしてみてください。

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