ギャル電きょうこの意識の低い工具入門
たかがニッパー、されどニッパー。ニッパーを笑うものはニッパーに泣く! #ギャル電きょうこの意識の低い工具入門
ある日、ギャル電のきょうこさんから呼び出しがかかりました。指定された場所へ行くと、きょうこさんは強く訴えたいことがある様子。
「あのね、最近電子工作をする人が増えてきて喜ばしいことなんだけど、道具の使い方が初心者のみんなに全然届いてない!」
これは結構お嘆きのよう。確かに初心者向けの工具情報が少ないからか、初心者は道具についての知識を得にくいですよね。なのに、誤った使い方をして怒られるというのもかわいそう。なんとかしたいですよね。
「そこでね、私がストリート工作で培ったさまざまな工具について熱く語っていきたいと思うわけ。つーわけで第1回はニッパー!」
ニッパーって、電子工作では割と重要な工具ですよね。プラ切ったり、電線切ったり。でも、なんでニッパーなんですか?
「初心者がニッパーの貸し借りで失敗したときの悲劇を、この世界からなくしたいんだよね……」
ニッパーの悲劇…?
ニッパーがカップルの破局を招く?
「ニッパーってハサミみたいに気軽に使えるイメージの工具だけど、刃とかは結構繊細なんだよね。例えば、カップルの片方が工作とかプラモやってて、ニッパーにひそかにこだわりがある場合に悲劇が起こりやすい。
軽い気持ちでニッパーを借りて、ハサミで切れない硬いもの切って、悪気なく刃先が超ボロボロになったニッパー返すとするじゃん。カップルの破局の要因に充分なりうるね」
別れますか……。ニッパーで……。
「別れる! 一口にニッパーっていっても、結構種類があって。刃の薄さとか切りやすさとか、細かい用途に向いているものとかもっと厚みのあるものを切る用とか。いいニッパーは結構高い。ガチ勢は用途に合わせて複数のニッパーを使い分けたりしてるから、それを知らないで大事なニッパーを使われたら、そりゃ別れるでしょ! 人のニッパーを勝手に使って刃こぼれさせるなんて、人格疑われてもしょうがないよ!」
な、なんか過去にあったんですかね……。まあ、なんとなくニッパーは気軽に適当に使っちゃいけないというのは分かりましたけど。
「ギャル電もニッパーを重要視してる。基板むき出しのアクセサリーとか作るから、LEDの足とかはんだ付けした後に切って、それをそのまま首から下げたりするじゃん。そのとき、安いニッパーだと切り口がガサガサしてて、洋服とかに引っかかっちゃうから。お気に入りの服に引っかかったら、叫ぶね」
そりゃ叫びますね(笑)。じゃあ、具体的にどんなニッパーがいいのか、教えていただきましょうか。
いろいろなニッパーで切ってみよう!
「とりあえず実際にいろいろ切ってみる? それが一番分かるから」
そう言うと、きょうこさんはニッパーを取り出します。いろいろありますね。
ハッコーのノーマルタイプ。FT-601 117mm 4070円 (税込)。
ハッコーの精密タイプ。FT-600 117mm 3960円(税込)。
VESSELのワイヤーストリッパー。中央にある刃の部分をよく使う。ネット通販で1500円前後。
100円ショップのもの。
こちらも100円ショップ。
TSUNODAのパワー硬線ニッパー。元エースで現在は荒事 (刃こぼれ上等!な作業)用。ネット通販で2500円前後 。
100円ショップのものから、結構ガチなやつまでいろいろありますね。
「最初はこだわりなく安いニッパー使ってたんだけど、工作やるようになってからだんだん増えて、今は金属用、プラ用、荒事用でそれぞれ違うニッパーを使ってる。で、使っているうちに刃先がだんだんダメになっていくから、そうなったらエース格を荒事用に回すとか、人に貸す用とか、そういう感じでサイクルを回してる」
人に貸す用ですか。そうすればカップルの悲劇もなくなるわけですね。
「100円のニッパーは切れ味が悪いんだけど、プラスチックのものを無理やりむしり切るときや分解するときに使ったりしてる。100円だしどうなってもいいやって感じだから、逆にパワーが出るね」
パワープレイには100円ショップのニッパーが向いていると。それぞれ役割があるわけですね。きょうこさんはワイヤーストリッパーも使ってるんですね。
「多分、私が電子工作で一番使っているのは、ワイヤーストリッパーの中央の刃の部分。結構普通に使える。根元まで切るのは苦手だけど、使い勝手がいいので、まずはこれ1本で始めてみるのもアリだと思う」
では実際に切ってみましょうか。
まずは100円ショップのもので結束バンドを切ってみましょう。
うーむ、切れ味悪いですね。ねじ切るような感じ。お次はハッコーのニッパー。
サクッと切れます。見ただけでも明らかに切れ味が違う。音も違いますね。
切り口を見てみましょう。
100円ショップのニッパーの切り口。明らかにギザギザしていて汚い。
ハッコーのニッパーでの切り口。きれい。エクセレント。
おお、明らかに違う。100円ショップの方は切り口がギザギザ。ハッコーの方は滑らかですね。
実践的なシーンでも使い比べてみましょう。ギャル電基板にはんだ付けしたLEDライトの足を切ってみます。まずは100円ショップのニッパーから。
切り口を見てみるとギザギザしてますね。結果としてはかなりひどい。
「これ、すごい力入れなきゃいけないんだけど、その割には切った感覚がないんだよね。しかもこのニッパー、新品でさっき袋から出したのにもう刃こぼれしてるんだけど(笑)」
お次はワイヤーストリッパー。
ワイヤーストリッパーは、切れるには切れますが、足が残っちゃいますね。
「これはもう、しょうがない。構造的に。でも切れ味はちゃんとしてる。足が残ったらあとは折り曲げておくしかないね。まあこういう作業には向いてないかな(笑)」
続いて、荒事用の元エースニッパー。
さすが元エースニッパー。切り口を見るとまあまあという感じです。100円ショップのものよりはいいですね。
「刃が欠けてないところを見つけて切ってみたよ。切れ味は悪くないね、元良家のニッパーなんで。悪くはないんだけど、刃があんまエッジ立ってないから切れ味的にこれ以上攻めていくのは難しいかな」
では、ハッコーのノーマルタイプのニッパーはどうでしょう。
切れ味はさすが。切り口もきれいですね。今までで一番滑らか。
「このニッパーは刃先が薄いから根元からごっそり切れる。断面が違うね。いいニッパーって、LEDの足とはんだの材質に違いがあっても一緒にスパッて切れるのね。悪いニッパーは材質が違うと切りづらい 」
最後はハッコーの精密タイプ。
精密タイプは細かい部分を切るとき用です。刃先がより鋭くて細い。切り口は先ほどのノーマルタイプとあまり変わらない感じですね。
「さすが精密用だけあって切れ味が鋭い。もう切るときの音が違う。料理人が使う包丁みたいな感じ」
実際に切ってみて、それぞれのニッパーの違いがよく分かりました。
100円ショップのニッパーの使いどころ
ここまで違いを見せつけられると、100円ショップのニッパーって買っても意味がないんじゃないかって思っちゃうんですけど、ギャル電的にはどうなんでしょう?
「いやいや、私たちストリート電子工作派としては100円ショップのニッパーにはかなりお世話になってるから、足を向けて寝られないよ(笑)。ほんと初心者の頃は、100円ショップのニッパーで電子工作やって、なかなかうまくいかなかったこともあったけどね。徐々に知識が付いてきて、ニッパーにもいいやつがあるんだって分かってからは、意識的に使い分けるようになった」
じゃあ、100円ショップのニッパーはどういうシーンで使ってるんですか?
「主に荒事的なやつ。造花みたいな、中に何が入ってるか分からないものを切るときとか。あとは太いプラスチックとか。もう刃先なんてどうなってもいいや、っていうときが100円ショップニッパーの出番」
ああ、そういうの切るときありますよね。そこでエースのニッパー使うと、刃こぼれしちゃったりするから、刃を傷める可能性があるときは荒事用ニッパーの出番になるわけですね。
「あと、一番使うのは破壊だね」
は、破壊…?
「プラスチックのおもちゃから光るパーツが欲しいときとか、ネジを外すだけじゃ分解できないものもあるじゃん? そういうときに分解というか破壊? 元に戻す必要がないときも100円ニッパーの出番」
なるほど。きれいに分解する必要がないときは、100円ニッパーで豪快に切り裂いていくわけですね。気持ち良さそう。なんか牡蠣の殻むきしてるみたいですね(笑)。
100円ショップでニッパーを選ぶコツ
左がハッコーのニッパー、右が100円ショップのニッパー。明らかに刃先の精密さが違う。というか100円ショップのニッパー、使ってないのに刃こぼれしてる…。
今回100円ショップのニッパーを2本持ってきていただいたんですが、そのうち1本は使う前から刃先がこぼれていました。やっぱり個体差がありそうですね。
「それなー! だから100円ショップでニッパー買うってときは、刃先をしっかり見比べて、刃こぼれしてないか、閉じたときにちゃんと刃先が揃っていて隙間がないか、握って離したらちゃんと刃先が開くかチェックしたいね」
こんな感じで購入前にじっくり確認するわけですね…。匠の目じゃないですか、もう。
「あと、100円ショップのニッパーは最初動きが硬いときがあるけど、しばらく使っていると急に動きがスムーズになるときがあるから、多少エイジングした方がいいのかも。エイジングっていうのかどうか分からないけど(笑)」
作り込みの精度が甘めだから、なじむまでにしばらくかかっちゃうんですかね。
ニッパーを使うときはメガネをしろ!
「あとね、基本ニッパーを使うときは安全メガネは必須だから。特に安いやつ」
ん? それはなぜ?
「安いニッパーで電線とか切ると、切れ味悪いから変に力入っちゃって、切ったやつがポーンって飛びやすい。超飛ぶ。それが目に入ったりしたら大ごとだからね」
なるほど。確かに安いニッパーで切ると飛びますね。どんなメガネがいいんですか?
「私はスポーツ用の安全メガネ使ってるけど、花粉症用のメガネでもいいし、なんなら普通のメガネでもいいと思う。要は目を保護しとけよってこと。できれば、はんだづけとかも溶かしたはんだが飛ぶことあるし、電子工作するときは常に着けておきたいね」
安全第一。指差し確認。重要です。ギャル電も安全には気をつけてるようです。
ニッパーはチームで持て!
いろいろニッパーを試してきましたけど、きょうこさん的にはどういう風に使っていけばいいと思いますか?
「100円ショップのニッパーは切れないけど、ちゃんと使い道がある。だから、“ニッパーはチームで持て!”って言いたいね。特に、適した道具が分からない仕事をするときって、だいたい100円ショップのニッパーがやってくれるから。私は100円ショップのニッパーは切る道具というより、むしる道具だと思ってる(笑)。だから、よく切れるエース、荒事用の元エース、そして100円ショップのやつ。これらをチームとして揃えておけばいいんじゃないかな」
なるほど。何も全部にいいニッパーを使う必要はなく、用途に応じてそれなりのものを使い分けるようにすればいいわけですね。
「それと、人に貸す用もあるといいね。自分のエースニッパーで厚紙とか切られたら、ほんとにケンカになるから。元エースを貸し出し用にしておくっていうのもアリかも。何事も自衛が大事だね」
自衛ですか。ニッパーで家族崩壊になっても困りますから、貸し出し用をあらかじめ用意しておくのが良さそうです。
ということで、「ギャル電きょうこの意識の低い工具入門」、第1回はこれにてお開き。さて、次回はどの工具について語ってもらいましょうかねー。
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