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ギャル電きょうこの意識の低い工具入門

もげない最強USBコネクターを選ぶ「もぎ-1グランプリ」開催! #ギャル電きょうこの意識の低い工具入門

ストリート電子工作界を縦横無尽に駆け巡るギャル電のきょうこさんが、電子工作初心者に工具の大切さを伝える「ギャル電きょうこの意識の低い工具入門」。

前回に続き、今回もまたまた工具じゃありません(この連載のタイトル……)。きょうこさんは、電子工作のマストアイテムであるマイコンボードの「USBコネクター」について、何やら語りたいことがあるようです。

ボード上の部品は永遠じゃない

ボードに付いているUSBコネクター。microUSBや、USB Type-Cなどいろいろな種類がありますが、きょうこさんはこのコネクターは「永遠じゃない」と言います。

「ボードに付いている部品って、永遠だと思うじゃない? でも電子工作をやってると、ガンガンもげる。特に、私のように安いボードとか使ってると特にね」

そう言いながら取り出したのが、こちら。

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「これ見て。左が通常のボード。右がUSBコネクターがもげたボード。こないだ、ワークショップでみんなの前で作って動かすってときに、コネクターが3回連続でもげて現場が止まっちゃって。あ、死ぬなって思った」

いやいや、それくらいじゃ死なないですから。がんばって。

「USBコネクターが取れると、もう給電もプログラム書き換えもできないから超めんどくて終わり。一生の終わり」

大げさですって……。でもまあ、きゃしゃな部品だからもげますよね。

「そう。もげるんだけど、なんか一応売ってるものっていう魔法のバイアスがかかってて、なんとなくもげないって思ってる。電子工作に慣れてくると、もげないなって感じるんだけど、もげる。この話は、まず基板にある部品はもげるよって話から始まる」

もげるんですね。気を付けないといけませんね。

「USBコネクターももげるんだけど、私がよくやっちゃうのがスイッチ。これは私の電子部品の扱いが超乱暴っていうこともあるんだけど。スイッチのポッチが取れちゃう。こうなるともう、お手上げ」

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これじゃあ、スイッチのオンオフできませんね。

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「これはスイッチ丸ごと持っていかれてる」

かなりひどいですね。スイッチとしてまったく使えないでしょう。

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「これ、現場でどうしたかというと、無理やりスイッチの足を折って通電させた。見て、この涙ぐましい努力」

でも、これってスイッチ入りっ放しですよね。

「そう。根本的な解決はしてないけど、付いてるからまいっか、っていうギャル電的解決法」

コネクターがもげる瞬間を捉えた衝撃映像

まあ、コネクター類はもげるものだということが分かりました。

「今までにもげた基板持ってきたから、見て」

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うわ、結構なグロ画像ですね……。もげ方にもいろいろ種類がありそう。

「1個目はケーブル挿して持ち上げたらもげちゃったってパターンね。2個目は基板から外れちゃった。3個目が結構やっかいで、基板のプリントが剥がれちゃってる。1個目と2個目は直そうと思えば直せる可能性もあるんだけど、3個目みたいになると修復は不可能」

ああ、こうなると基板ごとダメになっちゃうんですね。もげ方にもレベルがあるってことか。

「じゃあ、いったいどうしたらもげるかっていうのを、今から実演するから。見てて」

おお、閲覧注意の動画になってますね。結構簡単にもげますね。

「これはmicroUSBのコネクター。ケーブル挿してちょっと持ち上げるともげちゃう」

基板に載ってるUSBコネクターって全部もろいんですね。

「いや、そうでもないんだよね。実はコネクターの裏側が重要なの」

基板選びは裏を見ろ!

「取れやすい取れにくいっていうのは、コネクターの形状とかは関係なくて、実は基板の裏側が大事なのね」

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「これは私がよく使う安いボードたち。みんな大好き」

まあ、表だけ見てると、コネクターにそんなに違いがあるようには見えませんね。

「だから、裏側が重要なの」

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「裏を見ると、コネクターの部分に穴が空いている基板と、穴が空いてない基板があるんだよね」

確かに。一番左の基板は穴が空いてませんね。あとは、2つ空いてるやつと4つ空いてるやつがありますね。

穴のないタイプ(左)と2つ穴タイプ(右)。きょうこさんいわく「風が吹いてももげる基板」 穴のないタイプ(左)と2つ穴タイプ(右)。きょうこさんいわく「風が吹いてももげる基板」

「コネクターの足が基板の裏に貫通しているかどうかですごく変わるの。貫通してないのは取れやすいし、2つ穴より4つ穴の方が取れにくい。だから買うときは基板の裏を見て、4つ穴を選ぶといいと思う」

4つ穴タイプ。頑丈さで選ぶならこれ。 4つ穴タイプ。頑丈さで選ぶならこれ。

なるほど。取り付け箇所が多い方が頑丈になりますからね。

「違うタイプのコネクターだと、Arduinoで入門編によく出てくるArduino UNOはUSB Type–Bなんだけど。これだとでかいからガッチリしてて壊れないんだよね」

右がArduino UNO。 右がArduino UNO。

「大きいコネクターって基板から外れにくいんだよね。なぜかっていうと裏でがっちり付いてるから」

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「ギャル電的には、今は単純に、小さいコネクターは外れるもんだっていう気持ちでいる。コネクターを壊さないのが前提なんだけど、壊れちゃうこともあるから、小さいコネクターを使う場合は、覚悟しなってことで」

覚悟を持って電子工作に挑めと。今までコネクター壊れるよって言ってる人、あんまり知らないですね。

「こういうことを言っていくのがギャル電だから」

電子工作界の意識改革ですね。

USB Type-Cコネクターはもげにくい

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「これはUSB Type-C。キーボードとかを自作する界隈では、このシリーズのPro MicroはUSB Type-Cだからいけるみたいなことをよく言ってて。よく見ると、確かにUSB Type-Cコネクターが付いている基板って、だいたい裏側4カ所固定されてるんだよね」

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ほんとですね。これは頑丈そうだ。

「これはかなり頑丈だよ。ちょっとやってみようか」

おお、USB Type-Cはもげないですね。

「かなりがっちり付いてるからね。だからUSB Type-C最強伝説が生まれたんだと思うよ」

microUSBに比べれば確実に頑丈ですね。

「片側だけではんだ付けされているタイプのmicroUSBコネクターが一番鬼門だと思う。このコネクターはスペースを取らないから、残念なことにギャル電が好きな安くて小さいArduino系の互換ボードによく使われているんだよね。それを使っているボードは、気を付けた方がいい」

みんな、そんなこと気にしてボードを選んでるんですか?

「自分で基板とかを作ってる人は、コネクターの部品選ぶときにもげないように気を付けてるみたいだから、気にしているかもね」

基板設計……。ストリート電子工作にはない世界線ですね。

USBコネクターの細かいお話

「お次は、そもそも部品で売ってるUSBコネクターってどうなってるのかって話をするね」

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これまた細かい部品ですね。

「これがコネクターの部分だけのパーツ。左からUSB Type-Cの電源供給用、USB Type-Cの基板用、microUSBのボトムマウント、microUSBのトップマウント。これを基板にはんだ付けしていくの」

これ基板に付けていくんですか。ちまちました作業ですね。

「基板を自作する人はみんなやってるね。細かいからあんま手はんだとかではやんないと思うけど」

microUSBのボトムマウントとトップマウントって、何が違うんですか?

「これ、私も今回コネクター部品単体で買うまであんま気にしてなかったんだけど、microUSBって、上下で形状違うでしょ。広くなっている方が上側にくるのがボトムマウント。その逆がトップマウント。トップマウントはリバースマウントって表記になってることもあるっぽい」

へえ。それで何の違いがあるんでしょうね。

「さあ。でも抜けやすいとか抜けにくいとか、基板作るときのスペースの問題とかあるんじゃね」

なるほど。お次は?

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「左が電源供給用のUSB Type-C、右が電源供給用のmicroUSB」

あれ? USB Type-Cが4ピンじゃない。

「電源供給だけど2ピンでいけるんだよね。データ通信もするタイプは4ピン付いてる。ぶっちゃけ結論を先に言うと、microUSBのマイコンボードを使う場合はもげやすいのを諦めるしかない。できれば、USB Type-Cのボードを使うようにした方がいいと思う」

まあ、規格的にも新しいし、強いですからね。

「あと、microUSBのボードって最近高くなってるんだよね。USB Type-Cの方が新しいのに安いマイコンボードが出てる。」

じゃあ、みんなさっさと乗り換えた方がいいですね。

「でもね、サステナブルな電子工作でいうと、ずっと同じボードを使いたいんだよね。なんかPythonでプログラムとか書きたくないし、使い慣れてないボードの初期設定とかダルいし。できれば、今までと同じ方法でやりたいじゃん」

知識やテクニックのアップデートは必要だと思うけどなぁ。

「そうそう。でも環境変えるのはめんどい。だから、ワンチャン補強で乗り切れないか試してみようと思う」

USBコネクターをもいでいく「もぎ-1グランプリ」だ!

試す?

「いろいろな補強をしたUSBコネクターを、実際にもいでいくよ!」

!!!! なんという検証方法!!

「とりまギャル電がよくやりがちな補強方法を全種類試してみようと思う。普通に裏側だけはんだ付けしたやつ、表からもはんだ付けしたやつ、裏側はんだに表からレジンで固めたやつ、裏側はんだに表からホットボンドっていう4種類を、USB Type-CとmicroUSBコネクターで試してみるよ」

うわぁ。暴力的な実験だ! ワクワクしちゃう!!

「まずは、microUSBからいこうか」

一番もげやすいと言われている、microUSBですね。これは表面実装用で足が2ピン付いているタイプです。実験用に、データ通信する部分もユニバーサル基板に一応はんだ付けされているとのこと。

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まずは通常のはんだ付け、ノーマルから。

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「秒で取れた。やっぱり表面実装タイプはもろい。これが基準になると思って」

次は表裏からはんだ付けしたもの。

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「お、強い! 耐える耐える! 全然取れない。ケーブルの方が曲がっちゃう」

おお、はんだ強いですね。ちょっと手間だけど、表裏両方にはんだ付けた方が強くなりますね。

お次はレジン。

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「あれ? あっけなく取れた。もしかしたら、私のレジンの扱いがよくなかったかも。はんだ付けした直後に硬化させるの面倒臭いから、塗ってそのまんま日光に当てて放置したら乾くでしょって。扱いがよくなかったなぁ。レジンに申し訳ない」

最後はホットボンド。

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「ダメじゃん! ホットボンド全然ダメじゃん!」

いやぁ、きょうこさんって以前ホットボンド最強説唱えてませんでしたっけ?

「まあ、ホットボンドにも得意不得意はあるよね。コネクターを強化するんだったらはんだ付けがよさそう」

華麗にスルーされた……。

リバースタイプのmicroUSBはどうだ!

「今度は、リバースタイプのmicroUSBでやってみるよ。上下逆になると強度が違うかもしれないから。でも、リバースタイプってケーブル挿しづらいんだよね」

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microUSBって上下があるから、いつもと向きが違うと違和感ありますよね。

まずは裏側のみはんだ付けしたものから。

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「あっけないね……。これはもうケーブル挿した瞬間にダメだなと思った。リバースタイプははんだ付けがやりづらいんだよね。私のテクニックの問題でもあるんだけど」

次は、はんだダブル。

「ちょっとはんだ盛り過ぎてケーブルがうまく刺さらなかったので、ペンチでやるよ! うりゃ! ビクともしない!!」

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おおお、はんだ最強じゃないですか。作業は面倒かもしれないけど、強度上げるなら、はんだダブルですね。

「テストして良かったね。もぎ-1グランプリ優勝だよ」

お次はレジンです。

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「レジンは、さっきも言ったけど私が悪いことしちゃった……。で、結果は簡単に取れたね。何の意味もない」

まあ、次にもぎ-1グランプリやるときはレジンをちゃんと硬化させましょう。

最後はホットボンドですね。

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「はかないね……。ホットボンドはもっとやれる子だと思っていたんだけど。上から固める系は効果ないね。やっぱり局所でちゃんと留まってるというのが大事なんだな」

ホットボンド最強説はなんだったんでしょうか……。

「配線留めには良かったんだけど、コネクターには不向きだったね。はんだは、中に入って結合するから強いんだろうね」

安心安全の4点接続タイプmicroUSB

お次は4点接続タイプのmicroUSBですね。

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「4点接続タイプは多分もげないと思うんだよね。基板に付いてる部分が単純に2倍だから」

よし、やってみましょうか。

まずは裏側のみはんだ付けしたノーマルから。

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「大丈夫だね。4点だったら裏側のはんだだけでも十分いけるね」

2点接続と4点接続ではこんなに違うんですね。

次は、はんだダブル。

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「ビクともしない。これ以上力を加えたらケーブルが壊れるね」

はんだ+レジン。

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「4ピンだとレジンあるなし関係ないね。4点接続で裏側が貫通していれば、レジンなんか使う必要ないね」

じゃあ、ホットボンド。

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「あ、取れた(笑)。私のはんだ付けがイケてなかった可能性があるね。ホットボンドを過信して、はんだ付けをおろそかにしちゃったかな」

USB Type-Cコネクター最強説を確認

最後は、4点で基板に接続するタイプのUSB Type-Cコネクターですね。

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ノーマルはんだからいきましょう。

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「ケーブルの挿し心地はUSB Type-Cの方がいいね。ケーブルも軸が太くて安定してる。うーん、ガッチリ留まってる」

安定してますね。お次は、はんだダブル。

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「むっちゃ強い。強度でいったら今までで一番かも。ただ、はんだダブルのデメリットもあって。はんだを上から盛ると中に染みこんじゃって、ケーブルがうまく挿せなくなることがある。あと、狭いからはんだ付けにテクニックが必要。4ピンだったらここまでやらなくていいかもね」

そうですね。一応レジンもやっときますか。

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「大丈夫だねー。まあ、もうレジンは何の役にも立ってない……」

いやいや、やったという事実がありますよ! 最後はホットボンド。見た目が汚いですね。

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「取れないね。まあ、これもホットボンドのおかげじゃない可能性が高い。結論としては、4点接続で裏が貫通しているタイプなら、特別な補強をしなくてももげないってことかな」

そうですね。手をかけても強度は変わらないということで。

ホットボンドはもげる

今回のもぎ-1グランプリで分かったことってなんでしょう?

「今回、めちゃめちゃコネクターをはんだ付けして実験して、もげにだいぶ慣れた。普通にちっちゃいサイズで基板との接続箇所が少ないコネクターはもげる、ってことが分かってかなり諦めがついたね。あと、コネクターのデータ通信用の部分は、はんだ付けがめっちゃ細かくて手でやるの超大変。もげるときに基板のパターンも一緒に剥がれることが多いし、相当な理由がない限りはコネクター直すより、新しいボードに変えた方がいいなって改めて思った」

最近ボード類も値上がりしてますけど、数百円ケチってちまちました作業をしても、見返りが少ないってことですね。

「あとは、2点接続タイプとか、接続ピンが裏まで貫通してないタイプは超もげる。もげてもげて3回くらいもげて悲しくなったら、コネクターが頑丈なタイプの新しい推しマイコンボードを探しなってこと」

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使い慣れたボードに見切りを付けて、次に旅立とうと。新しいボードとの出会いを探すのも、楽しいかもしれませんしね。

「結論としては、ホットボンドを上から盛っても、ヤバいボードはヤバい」

それは、今回よーく分かりました。肝に銘じておきます。

ということで、「ギャル電きょうこの意識の低い工具入門」、第5回はこれにてお開き。さて、次回はどんな工具が出てくるのか? お楽しみに!


ギャル電 きょうこ

今のギャルは電子工作する時代! ギャルによるギャルのための電子工作を提案するユニット「ギャル電」で活動している。 最近ハマってる飲み物はトマトジュース(無塩)

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