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大前教授インタビュー

クルマが“クルマ”じゃなくなる未来が、走り出している。

ハンドルも握らず、アクセルも踏まず、シートに座っていれば目的地へと移動することができる……。そんな“クルマの未来”の開発が、実用化に向けて加速している。自動車メーカーはもちろん、Googleまでもが開発に乗り出す「自動運転車」。その研究の今を、自動運転車研究の第一線で活躍する慶應義塾大学の大前学教授に伺った。(撮影:水戸 秀一)

大前学教授

大前学教授(慶應義塾大学 政策・メディア研究科)

東京大学大学院に在籍中の1995年から、指導教官の勧めにより自動運転車の研究開発に携わる。2000年、慶應義塾大学環境情報学部助手として着任。クルマとITを融合させる研究を本格化。

主に「オンデマンド型自動運転」「高密度隊列走行」「遠隔操縦」を研究テーマとし、現在までに高い成果をあげている。文部科学省科学技術振興調整費「コ・モビリティ社会の創成」やNEDO「エネルギーITS推進事業」などの自動運転に関連する大型プロジェクトにも参加。2013年より現職。 専門分野は、機械工学(機械力学・制御、自動車工学)。

まず変えるべきは、クルマという既成概念。

——自動車メーカーやGoogleが自動運転技術の開発を進めています。この「未来のクルマ」の実用化に向けて必要になるものとは何でしょうか?

「高い技術力が欠かせないのはもちろんですが、それ以前にクルマに対する“考え方”の変革が必要なんじゃないかと思っています。

“万が一の時に衝突を回避する”、“先行車との車間距離を一定に保つ”、“走行車線からの逸脱を防止する”など、さまざまな運転支援システムを搭載したクルマが、当たり前のものになりつつありますよね。

でも、現在の運転支援システムは、もともと運転できる人が安心したり、楽をしたりするためのものだと思うんですね。もちろん、これはとても大切なことではあるのですが、一方で、そもそも運転ができない人は、その恩恵を受けることができないという側面もあります。私は、それでは不十分だと思うんです。

自動運転車の目となる全方位レーザーライダー(Velodyne社製)。 自動運転車の目となる全方位レーザーライダー(Velodyne社製)。

自動運転の開発が目指すべきは、いつでも、誰でも、どこへでも行ける社会です。それは、明らかに今までとは異なる社会です。だから、これまでのクルマという概念を、一度取っ払う必要があるはずなんです。

極端な話にはなりますが、私はクルマがエレベーターのような乗り物になればいい、というイメージを持っているんですよ。クルマに乗っているだけで、自動で目的地に到着する。エレベーターのように完全にすべてのルートを自動化することで、ありとあらゆる人が、自由に、安全に移動できるようになるわけです。それが、未来のあるべきクルマ社会だと思っています」

——10月に東京で開催されたITS※世界会議では「自動運転」や「スマホとの連携」「車車間通信」などが大きな注目を浴びました。大前教授も以前からこれらの研究をされてきたそうですが、どのような内容なのでしょうか?

「私の研究室では、主に3つのテーマで研究に取り組んでいます。ひとつが、クルマを呼び出し、自動走行し、自動駐車を行う“オンデマンド型自動運転”。もうひとつが、センサーによる車車間の情報共有を活用した“高密度隊列走行”。そして、自動運転の補完的な役割として機能する“遠隔操縦”です」

※ITS:Intelligent Transport Systems(高度道路交通システム)

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